連載企画「Re(PLACE)」/「Rhoikos&Theodoros」による展示「(PLACE)」を他者が様々な地点から観察しテキスト表現や写真表現で拡張する試み

 HITSPAERでは、今年6月から7月にかけて渋谷のギャラリー「(PLACE)by method」で開催された、「Rhoikos&Theodros」による展示「(PLACE)」の拡張を試みる連載企画「Re(PLACE)」(全4回)をスタートする。
 本企画では、(PLACE)のテーマを踏襲しながら、展示場所や作家をリプレイス(Replace=置き換える、取り替える)することで(PLACE)という展示そのものの拡張を試みる。
 連載では、様々な地点から展示を観察した建築家や写真家らがテキスト表現や写真表現したものを掲載する予定だ。

 内容は下記の全4回となっている。


第1回: 西澤徹夫 (建築家)
建築やアートの視点からテキストの􏰆拡張を試みる
写真: 太田拓実
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第2回: kim van aalderen (写真家)
「写真表現」に􏰆よる拡張を試みる
翻訳: 大西萌
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第3回: 佐々木新 (物語作家/クリエイティブディレクター)
パーソナリティ/アイデンティティの視点からテキストの􏰆拡張を試みる
写真: 室岡小百合
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第4回: Rhoikos&Theodrosへのインタビュー
展示を通してR&Tの試みる拡張を探る
インタビュアー:鶴本浩平(編集者)
写真: 太田拓実
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 尚、会期中に本展を鑑賞できなかった読者の方々の為に、本記事よりフォトレポートを展開したい。
 渋谷のギャラリー「(PLACE)by method」にて開催された、「Rhoikos&Theodoros」の初の展示となる「(PLACE)」は、ファッションレーベル「Jens」のこれまでの活動に着想を得て創作が始まった。Jens はプロダクト・インテリア・アートなど、空間を演出するものも身につけるものと同軸に捉え、複数のアーティストと協働しながら、身近な素材を活かした日常/非日常を行き来する洋服やジュエリーを提案してきたレーベルである。
 本展では、Jens の空間で重要な役割を果たす「28mm径のパイプ」が着目され、そこから様々な作品に展開がなされていった。「什器」と認識していたパイプが、展示空間の中でインテリアの一部・ プロダクト・彫刻とその姿を拡張させていく表現は、鑑賞者が理解していたはずの意味や本質を溶かし、モノや空間を新たな視点・感覚から捉え直す機会となった。
 下記、作品をひとつずつ紹介する。


Moving/引越し
photo Takumi Ota
どこからか運び込まれた大量のダンボールが小空間に整然と積まれ、押し込められている作品。ダンボールを開けるとそこには美しい服が入っている。ダンボールを自由に移動させ気に入った服を探すことができるし、それを購入することもできる。整然と積まれていたダンボールは鑑賞者が服を探すたびにその姿を緩やかに変えていた。


Speaker/スピーカー
photo Takumi Ota
アルミパイプの内側に耳を傾けると音のような音楽のようなものが流れてくる。音楽が空間そのものに変換され溶け込んでいる作品。


Curtain/カーテン
photo Takumi Ota
服とカーテンが重なりあうパイプシステムはそこにある機能性のみならず、服が空間化することで生まれるいくつかの情緒的な可能性を示唆した作品。


Ring hook/リングフック
photo Takumi Ota
服を掛けるパイプのその先にある指輪用のフックと指輪。どんな小さな部屋にもロマンティックなスペースを生み出す作品。


Closet/クローゼット
photo Takumi Ota
服やモノが仕舞われている空間を拡張したパイプシステム。服やモノの持つ気配や雰囲気が空間として立ち上がっていた。


Telescope/望遠鏡
photo Takumi Ota
覗き込んだパイプの穴からは、遠くにある対象物がより近くにあるかのように。近くにある日常がより遠くに感じるような作品。


Coat hunger/コートハンガー
photo Takumi Ota
真鍮で出来た大きな円柱と三本の細長いアルミパイプで構成されたこのプロダクトは一切の接着が無く、そのモノの持つ重心や力点、作用点などのバランスだけで構成されていた。


Mirror/鏡
photo Takumi Ota
鏡面加工された板がパイプにはさまれていた。それだけでは自立せず何かに寄りかかったりどこからか吊られたりすることでこの鏡は成立していた。


No title/無題
photo Takumi Ota
ギャラリーの外に配置され吊るされているパイプシステム。ギャラリーからひとたび外に出たパイプは建物や街並みを展示空間に置き換えられていた。中華屋のおじちゃんにとって謎でしかないこの物体は、それでも街並みや景観のひとつの要素となり公共性を帯びていた。

 簡単な紹介にはなったが、連載企画の参考にしていただければ幸いだ。



Rhoikos&Theodros 「(PLACE)」
会期 | 2020年6月19日 (金) – 7月5日 (日)
時間 | 12:00 – 19:00
会場 |(PLACE) by method
主催 | method
ビジュアルコミュニケーション | 竹田美織
写真 | 太田拓実
通訳 | 大西萌
PR | method, 梁原正寛
制作
Speaker | 土井樹
Ring hook | 小嶋直人
Coat hunger | ウヌマ株式会社



Rhoikos&Theodros
ロイコスアンドテオドロスは、既存のモノ・空間を変容させ、その鑑賞によって新たな発見を促すアートユニット。武藤亨と小宮山洋によって、2020年にスタート。個々の感性を活かし合う創作方法を重視し、他の組織・個人の活動を作品に取り込むことで生じる関係性を、空間やモノに拡張しながら、新たな意味・体験の創出を試みています。
Jens イェンス
武藤亨によるファッションレーベル。普段なれ親しんだ素材を最大限に生かし、日常と非日常を行き来する洋服やジュエリーを提案。 プロダクトやインテリア、アートなど空間を演出するものも身につけるものと同軸に捉え、空間的なアプローチの新作発表「プレビュー」を毎シーズン行っている。
小宮山洋
プロダクトデザイナー。プロダクトデザインを基軸に国内外の企業・組織のR&D(研究開発)のサポート、ハードウェアやサービスの立ち上げ、ブランドのディレクションまで多領域を扱う。近年は、ジェネラティブなアプローチや、プロトコルから対象を考えルールを設計することでモノづくりの新しいカタチを探っている。主な仕事に、国内ではカリモク家具による「Karimoku Cat」や、蔦屋書店初のデジタルプロダクト「T Air」のプロダクトデザイン。東京都美術館「TC&D」での作品展示。国外ではミラノサローネ「ventura projects」にてリサーチプロジェクト「mold」を発表。INTERNI「‘FEEDING’ New Ideas for The City」、parisのセレクトショップ「merci」での展示。また受賞歴に、iF DESIGN AWARD、Red Dot Design Award、Design for Asia Awardなどがある。