自宅から娘の学校まで15キロの道中に取り組んだ、リカルド・カセス による写真日記『TOT』

 リカルド・カセスによる写真集『TOT』がリリースされる。
 リカルド・カセスは、風景の特殊性と、人間の行動が風景に与える影響、またそこに住み、その風景に手を加える人々の行動を描写することに近年焦点を当てている作家。彼は身近な地理的環境にフォーカスしながら、その場所を完全に理解し伝えるための写真のジェスチャーを探し求め、さまざまなアプローチを試みている。




 本書『TOT』はカセスが2019年1月から6月にかけて、自宅から娘の学校まで15キロの道中に取り組んだ写真日記である。彼の一日の仕事は、通学途中の娘を車内や玄関先で撮影することから始まる。その後は、二人が出会った風景と、それを写真に収めようとする彼の喜びとフラストレーションとを、この冒険の旅を通して解き明かす。
 日常生活のメタファーとしてコミックグリッドを思わせるレイアウトを採用することで、イメージの後ろにあるリサーチと制作のメカニズムを公開し、まるで文章を書くように、秩序だった一連の経験の根底にある資質、困難さ、あるいは豊かさのニュアンスを提示している。




 写真家の人生における家族や仕事上の制約と、現実を切り取ることができない写真言語の限界という、二つのテーマに向き合った意欲的な一冊をぜひ手にとってほしい。


『TOT』リカルド・カセス
デザイン | リカルド・カセス + Tipode Office
ポストプロダクション | Arena Retouch
仕様 | 20 x 23 cm、208ページ(2冊組)、函入り、赤いリボン付き、サイン入りカード付、カラー図版: 1655点
協賛 | Centro Cultural Las Cigarreras
定価 | 6,500円+税
ISBN 978-4-907562-32-8
*Dalpine (スペイン)との共同出版
リカルド・カセス (Ricardo Cases)
1971年、スペイン・バレンシア州アリカンテ県オリエウラ生まれ。バスク大学で情報科学の学士号を取得したのち、2006年に写真コレクティブ「Blank Paper」に参加。2009年にデザイナーNataliaTroitiño と共に「Fiesta Ediciones」を結成、2013年からプラットフォーム「AMPARO」のメンバーとなる。2007年からは CASA (バレンシア)、Blank Paper、 European Institute of Design、EFTI (全てマドリード) などの学校で写真を教える。2019 年、Musee Nicéphore Niépce (フランス) で個展「Estudio elemental de Levante」を開催。 主なグループ展に、2013年にIMA gallery (東京)とLE BAL (パリ) で開催された「New Spanish Horizo n」、2017年のアルル国際写真フェスティバルで開催された Blank Paper Photography Collective の展示などがある。主な出版物に『Paloma al aire』(Photovision- Schaden-Dewi Lewis、2011)、『Elporquéde las naranjas』(Mack Books、2014)、『El blanco』(Dalpine、2016)、『Sol』(Dalpine、2017)、『Estudio elemental del Levante』 (Dalpine / torch press / The Ice Plant、2020) などがある。