enamel. / Interview with Ryoji Ishioka

oyasumi&ohayo (2008) 「another work*s」+81 collaboration with au
photo by Daisuke Ishizaka
H.P : www.enamel.co.jp
Interview by arata sasaki
Edit by ryota inoue
2001年より活動を開始した『enamel.』は、夫婦によるデザインユニット。彼らが生み出すプロダクトは、女性的なデザインと男性的なグラフィックがコンバインし、名状しがたいほど絶妙なバランス感をまとっている。そのバランス感に起因するプロダクトの先進性は、見ているだけでも気分が高揚する。これらのプロダクトはどのようなプロセスを経て生み出されるのか、夫でありグラフィックデザイナーのRyoji Ishiokaさんにお話を伺った。
Hitspaper:『enamel.』が誕生したバックグラウンドを教えてください。
enamel.:enamel. : 大学在学中から、伊藤桂司さんというイラストレーターのデザイン事務所でアシスタントとして働いていました。その時からすでに現在のパートナーと一緒に生活していて、当時、僕はグラフィックデザインのみ、パートナーは働きながら自分の使うバックを制作していました。ですから、『enamel.』は始めから二人でやっていた訳ではないんですよ。二人で共同作業をやり始めるようになったのは、アトリエに彼女の手作りのモノがたくさんあったので、「せっかくだから、誰かに見せたら?」ということで、僕が彼女の作品のルックブックを制作したのがきっかけでした。
poster accessories (2003)
(c) enamel.
Hitspaper:ブランド名「enamel.」の由来を教えてください。
enamel.:当初はまだ名前も決まっていなくて、僕らのことなんて呼べばいいんですかって取材で聞かれた時、じゃあ『enamel』でって、その場で決めました。ちょうど2000年くらいで、何とかデザインとか、何とかグラフィックとかが多かったので、誰も付けなさそうな感じの言葉尻で決めました。後づけですけど、エナメルって生地の名前でもあるし、グロス感もその当時は新鮮でしたから。
8th collection (2007)
(c) enamel.
Hitspaper:ということは、2000年が本格的に活動を開始した年ですね。
enamel.:そうですね。でも実はけっこう曖昧で、2000年の終わりくらいだったので、2001年とも言えますけど。
伊藤桂司さんの展覧会の後、まとめて一週間の休みをもらった時に、ちょうど僕らの仕事も忙しくて、「もう一週間休みを頂けませんか?」って伊藤さんに相談したら、意外と「暇だからいいよ」って。もう一週間、もう一週間と頼んでいくうちに、「もうやめていいよ、好きなことしたら」って言われてしまって。フェードアウト(笑)のような感じで独立しました。

7th collection (2006)
(c) enamel.
Hitspaper:最初は紙だけだったとおっしゃいましたが、紙以外のものにグラフィックをデザインするようになったのはいつ頃からですか?
enamel.:大学の授業で行ったシルクスクリーンのように、作っていく過程が手に残る身体感覚が忘れられなくて、一度、絵皿の個展を行いました。その後、『finerefine』っていうインテリアショップの内装に携わったとき、ちょうど壁の一面が空いたので、絵皿を使ってインスタレーションを制作ました。そこで商品化の提案があって、気付いたらこういうプロダクトが始まっていた感じですね。
紙ばかりやっていると、印刷業者さんとデザイナーとのあいだのやり取りが一過性すぎて、時々飽きてしまうんですよね。プロダクトだと業者さんと一緒に作り上げていくみたいな一体感もありますし、焼き方やクラフト感のやり取りが面白いです。昔、業者さんを捜す時に、十社くらいにメールを送って、全て断られたことがありました。結局、岐阜の業者さんだったのですが、「どうムリか教えてやるから今から来い!」と電話があって、実際に岐阜に行きました。そこで断るつもりだったらしいのですが、目と目を合わせて話し合うと「いいよやってやるよ」みたいな。プロダクトって、実は工芸製品に近くて、気持ち次第で制作可能かどうかが決まるということを、その社長さんから教わりました。
また、プロダクトだとそこに機能があるので、紙媒体とは基本的に情報の伝え方が違います。紙がプロダクトに変わるだけですごく違うんだなって思いました。
7th collection exhibition (2006)
(c) enamel.
Hitspaper:紙とプロダクトの違い非常に興味深いです、もう少し教えて頂けませんか?
enamel.:紙は新しいものが開発されたといっても実はそんなに差がなかったりしますし、元々の基本調や前例が用意されていますから、その中から選べばいいですよね。そういう意味で、紙はラクだなって思います。逆にテキスタイルだと、種類が無限にあったりしてセレクトするだけでもすごく大変です。でも、もちろん紙も好きですよ。例えば本の場合は四角でだいたい形が決まっていますよね。僕はそこに“潔さぎよさ”や“緊張感”を感じます。紙の世界は美しいですね。紙は限定されているからこそ、引き算ができて限りなくゼロに近づけます。反対にプロダクトだと機能があるので、足し算をしていかないといけない。それぞれ向かう方向が違いますし、高揚するポイントも違うと思います。
diet butcher slim skin 2006-07 aw catalog
photo by Aram Dikiciyan
Hitspaper:少し話が変わりますが、『enamel』さんのプロダクトは、フォルムがすごくミニマルで女性的ですけど、男性的なグラフィックがコンバインされていているものが多いですよね。普通ならお互いが反発しあって、乖離しそうですが、絶妙なバランス感を放っています。そういったバランス感のあるプロダクトって今までになくて斬新ですね。
enamel.:実は、そう言われるのは始めてです。これからそう言おうかな(笑)。でも確かにパートナーの影響はあります。僕ひとりだと、こういう風にはなっていないですね。彼女とは付き合っている当時から、「これはいいね」って思える価値観や距離感が一番近くて、すごく話しやすいです。プロダクトを作っていく過程で、お互いにコミュニケーションをとりながら進めていくので、そこに新しい気付きがあったり、お互いのコメントが新鮮だったり。もしかすると、そのバランス感ってこういう過程で生まれるのかもしれませんね。
Hitspaper: プロダクトについて、詳しくうかがってもよろしいですか?
enamel.:はい。一昨年、去年あたりに「グラフィックかっこ悪い」みたいな潮流があって、グラフィックが嫌じゃないグラフィックは何かということを考えるようになりました。グラフィックを“柄”じゃなくて素材の“マテリアル感“や“役割”と同じようなニュアンスで処理してプロダクトを作りたいなって。
例えば、4年前に作った紙袋の取っ手は、高級の代名詞であるシルクを使用していますが、本体は紙で紙バックの機能性に回帰します。このような素材が一体になっている、ちぐはく感を演出したくて作りました。また、紙バックは5重にしてありますので、雨が降っても大丈夫ですし、使っていく内にボロボロになって4層目が見えるようなギミックになっています。
財布の形は、パートナーがすごくこだわっいて、たくさんのサンプルを経て完成しました。僕も実際に使っていました。今まで僕たちは皮を使ったことがなかったのですが、素材にブタ皮を使っています。皮を使ってしまうとそれだけでプロダクトに完成度が出てしまうので、デザインでせめぎあえなくなるというか、デザイン自体が邪魔になるので、今までは使用していませんでした。けど、このブタ皮は汚れるのがかっこ良かったり、水洗いができたりと素材として面白かったので使用しました。皮が汚れてしまってもいいように、スタンプのよごれたグラフィックをいれました。
marimekko 2006-07aw campaign ad
photo by Yuji Takeuchi
Hitspaper:お二人でプロダクトを作っていく上で、最も大事にしていることは何ですか?
enamel.:お互いに言えることなのですが、大切なのは、自分自身に“ウソをつかない”ことですね。最終的な着地点がやりたいって思ったことか、本当に自分たちがやりたいことなのかを、一度立ち止まって良く考えます。
Hitspaper:2000年の設立当時から、プロダクトに対して考え方が変ったことはありますか?-
enamel.:変わってない部分もあれば、変わったところもありますね。時代の流れかもしれないですけど、自然回帰型というか、プロダクトは大量に作らなくてもいいのかなって思うようになりました。消費者にものをたくさん買わせても意味がないような気がして、少しデザイナーという職業に嫌気が差したりもします。新しいものが出れば買い替えるのではなく、ものを大切に使って、思い出をつくってほしいです。同時にそれは、無駄なものを買わないということですしね。

atelier ph
(c) enamel.
Hitspaper:少しずつそういう考え方をもったデザイナーの輪が広がっていけば面白いですね。
enamel.:本当にそうですね。けど、もしそういう世の中になれば、自分の中の天の邪鬼みたいな性格がでて、また逆行しそうですけど(笑)
Hitspaper: 最後に今後はどのようなプロダクトを制作していきたいですか?展望等あったら教えて下さい。
enamel.:例えば、『MoMA』のミュージアムショップに置いてあるものって、好き嫌いを通り越してデザイナーの思い入れや愛情、またそれに等しい機能性があって、見ているだけで幸せな気持ちになります。
ちょっと照れくさいですがその幸せな気持ちや平和を愛する気持ちを持って帰ってもらえるようなプロダクトを制作していきたいですね。

broken accessories (2006)
(c) enamel.
Hitspaper:楽しみにしています!長いインタビューありがとうございました。
enamel.:こちらこそありがとうございました。
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oyasumi&ohayo (2008) 「another work*s」+81 collaboration with au
photo by Daisuke Ishizaka
H.P : www.enamel.co.jp
Interview by arata sasaki
Edit by ryota inoue
2001年より活動を開始した『enamel.』は、夫婦によるデザインユニット。彼らが生み出すプロダクトは、女性的なデザインと男性的なグラフィックがコンバインし、名状しがたいほど絶妙なバランス感をまとっている。そのバランス感に起因するプロダクトの先進性は、見ているだけでも気分が高揚する。これらのプロダクトはどのようなプロセスを経て生み出されるのか、夫でありグラフィックデザイナーのRyoji Ishiokaさんにお話を伺った。
Hitspaper:『enamel.』が誕生したバックグラウンドを教えてください。
enamel.:enamel. : 大学在学中から、伊藤桂司さんというイラストレーターのデザイン事務所でアシスタントとして働いていました。その時からすでに現在のパートナーと一緒に生活していて、当時、僕はグラフィックデザインのみ、パートナーは働きながら自分の使うバックを制作していました。ですから、『enamel.』は始めから二人でやっていた訳ではないんですよ。二人で共同作業をやり始めるようになったのは、アトリエに彼女の手作りのモノがたくさんあったので、「せっかくだから、誰かに見せたら?」ということで、僕が彼女の作品のルックブックを制作したのがきっかけでした。
(c) enamel.
Hitspaper:ブランド名「enamel.」の由来を教えてください。
enamel.:当初はまだ名前も決まっていなくて、僕らのことなんて呼べばいいんですかって取材で聞かれた時、じゃあ『enamel』でって、その場で決めました。ちょうど2000年くらいで、何とかデザインとか、何とかグラフィックとかが多かったので、誰も付けなさそうな感じの言葉尻で決めました。後づけですけど、エナメルって生地の名前でもあるし、グロス感もその当時は新鮮でしたから。
(c) enamel.
Hitspaper:ということは、2000年が本格的に活動を開始した年ですね。
enamel.:そうですね。でも実はけっこう曖昧で、2000年の終わりくらいだったので、2001年とも言えますけど。
伊藤桂司さんの展覧会の後、まとめて一週間の休みをもらった時に、ちょうど僕らの仕事も忙しくて、「もう一週間休みを頂けませんか?」って伊藤さんに相談したら、意外と「暇だからいいよ」って。もう一週間、もう一週間と頼んでいくうちに、「もうやめていいよ、好きなことしたら」って言われてしまって。フェードアウト(笑)のような感じで独立しました。
7th collection (2006)
(c) enamel.
Hitspaper:最初は紙だけだったとおっしゃいましたが、紙以外のものにグラフィックをデザインするようになったのはいつ頃からですか?
enamel.:大学の授業で行ったシルクスクリーンのように、作っていく過程が手に残る身体感覚が忘れられなくて、一度、絵皿の個展を行いました。その後、『finerefine』っていうインテリアショップの内装に携わったとき、ちょうど壁の一面が空いたので、絵皿を使ってインスタレーションを制作ました。そこで商品化の提案があって、気付いたらこういうプロダクトが始まっていた感じですね。
紙ばかりやっていると、印刷業者さんとデザイナーとのあいだのやり取りが一過性すぎて、時々飽きてしまうんですよね。プロダクトだと業者さんと一緒に作り上げていくみたいな一体感もありますし、焼き方やクラフト感のやり取りが面白いです。昔、業者さんを捜す時に、十社くらいにメールを送って、全て断られたことがありました。結局、岐阜の業者さんだったのですが、「どうムリか教えてやるから今から来い!」と電話があって、実際に岐阜に行きました。そこで断るつもりだったらしいのですが、目と目を合わせて話し合うと「いいよやってやるよ」みたいな。プロダクトって、実は工芸製品に近くて、気持ち次第で制作可能かどうかが決まるということを、その社長さんから教わりました。
また、プロダクトだとそこに機能があるので、紙媒体とは基本的に情報の伝え方が違います。紙がプロダクトに変わるだけですごく違うんだなって思いました。
(c) enamel.
Hitspaper:紙とプロダクトの違い非常に興味深いです、もう少し教えて頂けませんか?
enamel.:紙は新しいものが開発されたといっても実はそんなに差がなかったりしますし、元々の基本調や前例が用意されていますから、その中から選べばいいですよね。そういう意味で、紙はラクだなって思います。逆にテキスタイルだと、種類が無限にあったりしてセレクトするだけでもすごく大変です。でも、もちろん紙も好きですよ。例えば本の場合は四角でだいたい形が決まっていますよね。僕はそこに“潔さぎよさ”や“緊張感”を感じます。紙の世界は美しいですね。紙は限定されているからこそ、引き算ができて限りなくゼロに近づけます。反対にプロダクトだと機能があるので、足し算をしていかないといけない。それぞれ向かう方向が違いますし、高揚するポイントも違うと思います。
photo by Aram Dikiciyan
Hitspaper:少し話が変わりますが、『enamel』さんのプロダクトは、フォルムがすごくミニマルで女性的ですけど、男性的なグラフィックがコンバインされていているものが多いですよね。普通ならお互いが反発しあって、乖離しそうですが、絶妙なバランス感を放っています。そういったバランス感のあるプロダクトって今までになくて斬新ですね。
enamel.:実は、そう言われるのは始めてです。これからそう言おうかな(笑)。でも確かにパートナーの影響はあります。僕ひとりだと、こういう風にはなっていないですね。彼女とは付き合っている当時から、「これはいいね」って思える価値観や距離感が一番近くて、すごく話しやすいです。プロダクトを作っていく過程で、お互いにコミュニケーションをとりながら進めていくので、そこに新しい気付きがあったり、お互いのコメントが新鮮だったり。もしかすると、そのバランス感ってこういう過程で生まれるのかもしれませんね。
Hitspaper: プロダクトについて、詳しくうかがってもよろしいですか?
enamel.:はい。一昨年、去年あたりに「グラフィックかっこ悪い」みたいな潮流があって、グラフィックが嫌じゃないグラフィックは何かということを考えるようになりました。グラフィックを“柄”じゃなくて素材の“マテリアル感“や“役割”と同じようなニュアンスで処理してプロダクトを作りたいなって。
例えば、4年前に作った紙袋の取っ手は、高級の代名詞であるシルクを使用していますが、本体は紙で紙バックの機能性に回帰します。このような素材が一体になっている、ちぐはく感を演出したくて作りました。また、紙バックは5重にしてありますので、雨が降っても大丈夫ですし、使っていく内にボロボロになって4層目が見えるようなギミックになっています。
財布の形は、パートナーがすごくこだわっいて、たくさんのサンプルを経て完成しました。僕も実際に使っていました。今まで僕たちは皮を使ったことがなかったのですが、素材にブタ皮を使っています。皮を使ってしまうとそれだけでプロダクトに完成度が出てしまうので、デザインでせめぎあえなくなるというか、デザイン自体が邪魔になるので、今までは使用していませんでした。けど、このブタ皮は汚れるのがかっこ良かったり、水洗いができたりと素材として面白かったので使用しました。皮が汚れてしまってもいいように、スタンプのよごれたグラフィックをいれました。
photo by Yuji Takeuchi
Hitspaper:お二人でプロダクトを作っていく上で、最も大事にしていることは何ですか?
enamel.:お互いに言えることなのですが、大切なのは、自分自身に“ウソをつかない”ことですね。最終的な着地点がやりたいって思ったことか、本当に自分たちがやりたいことなのかを、一度立ち止まって良く考えます。
Hitspaper:2000年の設立当時から、プロダクトに対して考え方が変ったことはありますか?-
enamel.:変わってない部分もあれば、変わったところもありますね。時代の流れかもしれないですけど、自然回帰型というか、プロダクトは大量に作らなくてもいいのかなって思うようになりました。消費者にものをたくさん買わせても意味がないような気がして、少しデザイナーという職業に嫌気が差したりもします。新しいものが出れば買い替えるのではなく、ものを大切に使って、思い出をつくってほしいです。同時にそれは、無駄なものを買わないということですしね。

atelier ph
(c) enamel.
Hitspaper:少しずつそういう考え方をもったデザイナーの輪が広がっていけば面白いですね。
enamel.:本当にそうですね。けど、もしそういう世の中になれば、自分の中の天の邪鬼みたいな性格がでて、また逆行しそうですけど(笑)
Hitspaper: 最後に今後はどのようなプロダクトを制作していきたいですか?展望等あったら教えて下さい。
enamel.:例えば、『MoMA』のミュージアムショップに置いてあるものって、好き嫌いを通り越してデザイナーの思い入れや愛情、またそれに等しい機能性があって、見ているだけで幸せな気持ちになります。
ちょっと照れくさいですがその幸せな気持ちや平和を愛する気持ちを持って帰ってもらえるようなプロダクトを制作していきたいですね。
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(c) enamel.
Hitspaper:楽しみにしています!長いインタビューありがとうございました。
enamel.:こちらこそありがとうございました。
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