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フード・アクティヴィズム
食を媒介として新たなコミニティを形成する社会的運動体


香港で流行中のGREEN ROOF PROJECTS『HK FARM』


いま、”食”を媒介としたプロジェクトが注目されている。
昨今のフードファディズム、東日本大震災後の放射能の影響に依る安全な食、食に関連する危機感に依って、フードリテラシーが高い人間以外にも大きな関心が”食”に集まっている。
こうした人体への影響と共に、”食”にコミニケーションといった人間のラディカルな部分を見出す活動も行われている。
コミニケーションにはそもそも『共有する』という意味が含まれているが、このコミニケーションがある目的や地域内で『共有されるべきもの』として行われる時、始めてコミニティが立ち上がってくる。コミニティの中には必ず何らかのコミニケーションが存在し、それ故にコミニケーションとコミニティは切っても切り離せない関係性がある。
そして、”食”は嘗て、共同で狩りをし、シェアをするというコミニティ内で生きる重要なコミニケーションでもあった歴史がある。

“食”と”コミニティ”と”コミニケーション”。
これらはどうやらプリミティブな連関性があり、何事も個人で完結する社会に於いても少なからず影響を与えているようだ。
今回は、生産、流通、消費の流通と”食”を媒介としたコミニティとコミニケーションまでの新たな関係性とその運動体を現代社会のオルタナティブな活動として捉え『フード・アクティヴィズム』と題して、2つ事例を挙げながら探求する。

コンクリートジャングルの屋上で形成される
グリーン・コミニティ『HK FARM』

香港にハチミツを使用した[HK HONEY]というプロダクトメーカーがある。
このメーカーの創始者であるマイケル・ラング(MICHAEL LEUNG)は、元クリエイティブ・エージェンシーでアートディレクターを務め、その後、趣味で始めた養蜂から派生して、ハチミツを使用したキャンドル等メーカーとしての活動をスタートさせるという一風変わった経歴を持つ。
彼が面白いのは、この養蜂で培ったノウハウをベースに、自らが住む香港という町でローカルと接続しながら、様々な形態のコミニティを形成しているところだ。
中でも、[HK FARM]と呼ばれる屋上での農作物の生産を行うコミニティは面白い。日本でも同様のオルタナティブな農作物の生産は多いが、[HK FARM]は、デザイナーやアーティストが中心となり地域の住民とコミニケーションをとる為、非常にデザインリテラシーが高いコミニティである事が特長だ。
また、そのヴィジョンや目的、理由も非常に明確である。
彼がこの活動を始めたきっかけは、ハチミツを使ったキャンドルを製作する際に、環境問題のリサーチを行い、香港の食料事情、スーパーマーケットに並ぶ食料の大部分が、他国からの輸入に頼っていることを事実として認識した事が発端だったという。
明確な理由は以下のようなことだ。



直感的に理解しやすいインフォメーション・グラフィックスはこのような活動でも重宝される。


・FOOD MILEAGE (フードマイレージ)
輸入されるオーガニック食品が多いニュージーランド、フランスからの食料輸送距離が香港で生産される場合に比べて900~1,000倍あること。

・GREEN ROOF (グリーンルーフ)
屋上の緑があることで、室内のエアコンコストが50%削減可能であり、25%ヒートアイランド現象を和らげることが出来ること。 (参考 : http://www.thedailygreen.com/living-green/definitions/green-roof)

・ROOFTOP FARMS IMPROVE AIR QUALITY (屋上農園による大気質の改善)
大気質の汚染を和らげることが出来ること。(因に、北京はニューヨークの約7倍の大気汚染が測定されている)


この調査の結果と明確なヴィジョンによって、『屋上農園を作る』という[HK FARM]プロジェクトが動き出し、その活動に賛同してくれる同士が集まった。このコミニティには、個人の自発性の原動力が明らかに異なり、貢献の上で成り立つという共有するヴィジョンを有している。
これは、大都市といえど自ら住む地域を愛するという『シビックプライド』の顕われであり、また、個人でありながら全体であるという”食”の本来持つプリミティブなコミニティが形成されつつある。









出会い、繋がる、広がる
生産者、販売者、消費者の新たなコミニティ『FANTASTIC MARKET』

大阪を拠点に、家具・空間・プロダクト・グラフィックのデザインから食、アートにわたってさまざまなクリエイティブ活動を展開する[graf]が2010年に立ち上げたコミニティ型プロジェクト『FANTASTIC MARKET』は、食の生産者、販売者が消費者に直接販売するというマルシェ式のマーケットだ。
従来の生産者、販売者、消費者は垂直統合、「川上から川下まで」と言われる一方通行の構造に成りがちであったが、このコミニティでは、3者が一同に介し、食のストーリーとなる生産工程や調理方法などのHOWTOを直接学ぶというコミニケーションが行われる。

grafがこうしたコミニティ型のプロジェクトをスタートしたのは、Meets Regionalの「畑プロジェクト」で、この畑のために、農作業小屋を建てたことをきっかけに畑づくりをも手伝った経験が大きかったという。
“食”に限らずものが産まれる工程には、人間が自然との対話によって学び得たストーリーが存在する。
都会で生活をする人間にとって”食”を生産することは様々な敷居があるが、こうした出会いのコミニティは私達人類が学び得たプリミティブな根源に触れる入り口となる筈だ。






食を媒介とした社会的運動体『フード・アクティヴィズム』が齎すコミニティ・デザインとは?

“食”を通じて”コミニティ”や”コミニケーション”を探ったが、このキーワードは世間一般でも、東日本大震災後から頻繁に聞かれるようになった。
嘗ては日本にも、未来を託せる会社組織、貢献し合える地域社会、信頼に足るパブリック・コミニティが存在していたが、 これらのコミニティは資本主義社会の発達、情報社会の発達や現代のインディビジュアリズムによって密なコミニケーションが希薄になり、コミニティとしては崩壊しかけているのが現状である。
代わりにネット社会のSNSを中心としたコミニティが注目されているが、そもそもローカル・コミニティとは、お互いに貢献し合うという関係性がベースとなる為、単純なウェブネットワークによる人の繋がりとは異なる。
根源的に異なるのは、人の繋がりの元なる”寄与・貢献”がコミニティには存在しているという事。
そして、コミニティにはもう一つ、単純なネットワークとは異なる性質を帯びる。
それは、社会に対する明確なヴィジョンを持ち、目的を果たす運動体の器となることである。
会社組織もそもそもこうした明確なヴィジョンを持ち、社会で或る目的を果たす運動体であった筈であるが、行き過ぎた資本主義によって本来の目的が雲隠れしてしまった。

このような密なるコミニティ、コミニケーション消失の中にあって、今、私達に求められるのは、社会の問題の解決を探り実行する”寄与・貢献”を持った共同体であり、そのプロセスを探求する為、コミニケーションがとれる心を許せるコミニティが必要となっているのではないだろうか。
こうしたコミニティを復活させるには、私達が最も共有しやすい”食”が一つの媒介物となる可能性は高い。
最大の危機がチャンスに成り得るならば、現状の食の危機は、私達の新たなコミニティとしての共通ヴィジョンと成り得る筈だ。

text by 佐々木アラタ(HITSPAPER)




参考 : 

シビックプライド―都市のコミュニケーションをデザインする
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クリエイティブ・コミニティ・デザイン
出版社 フィルムアート社
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