text by arata sasaki
11月からスタートした <学問の魅力をより多くの人へ届けるために様々な領域を横断し編集する> SYNAPSE project の新企画『SYNAPSE Classroom 食のメタモルフォーゼ』にゲスト生徒役で参加しました。 本イベントは「ヒトはおかしな肉食動物」の著者で農学博士である高橋迪雄先生がゲスト講師として招かれ、「ホモサピエンスとしてのヒト」と「文明人としての人」の間にあるミスマッチという切り口で、 古代から現代の食文化やヒトのパラダイムシフトの講義をして戴くと共に、食だけに留まらない社会、情報、メディアといった多岐に渡った白熱教室が展開されました。 高橋迪雄先生の今回の講義は、研究者ではなく一般の方にどのように『食』に興味を持たせ且つサステナブルに接続させ、理解してもらうかという観点で丁寧に構成されていました。 専門的用語は、業界内ではコミニケーションする上で曖昧ではない正確な認識のコンセンサス、そして意思疎通の速度を格段に向上させますが、先生の講義では適度に散りばめられて、且つ、翻訳に近い目線で広く伝搬する言語が混じり合い非常に丁度良い敷居の高さだったと思います。 本レポートは、2時間近い白熱教室の中で、私が特に印象に残ったいくつかのテーマを私の専門領域であるメディアといった観点からの考察として皆さんとシェア出来れば幸いです。 因に、ゲスト生徒役には、私の他に、(満)芸術栄養学 主宰の宮澤かずみさん、NOSIGNERこと太刀川栄輔くん、モコメシさん、デザイナーのふりをした学者 小倉ヒラクさんが参加しました。 各々の業界・分野によって、今回のイベントの捉え方が異なると思いますので、気になる方は、当日のUstreamが掲載されていますので、是非チェックして戴ければと思います。 内部脳と外部脳を持つ現代人 人類知というインフラ 自然淘汰の中、生物として<ヒト>から文明を創りあげる<人>に至るまで多くのパラダイム・シフトを経験し、そのパラダイム・シフトには、多くの知恵と思考と実践の生存戦略があったと教わりました。 高橋先生のお話では現代に至るまで、大枠ですが下記のようにパラグラフが付けられるそうです。 1. 移動戦略 = 4足歩行から2足歩行 2. 食物戦略 = 狩猟による肉食から農業による草食 3. 思考戦略 = 内部脳から内部脳+コンピュータ等による外部脳 4. 生殖戦略 = 試験管ベイビーによる妊娠(近未来) 現代の私達は、内部脳 + (コンピュータ等による)外部脳を持つという人類が未経験の段階にいますが、興味深いのは、この外部脳がウェブという形態のシェアを可能にするメモリであり、膨大な知識のクラウドソーシング=人類知という壮大なインフラを目の前にしています。 テクノロジーとウェブの連関相互関係はマッピングや属性付けを簡易にし、今後も多くの国や地域、社会構造に浸透、浸食し、異分野を繋げ、ある時は解体する <いつでも、だれでも、どこでも>が成立するユキビタス的な有機体の根幹となっていく事が予想されます。 こうした時、外部脳と内部脳の役割が明確となり、私達の内部脳が嘗ての人類とは異なる飛躍的なパラダイムシフトを起しても不思議ではないように思います。
人体とメディアのアナロジー
情報のメタボ化 高橋迪雄先生から、人類はある時点までは食料獲得の営みが生きる目的でしたが、現代は食料獲得に労働が伴わなくなり、生きる意味が変遷したとお聞きしました。 確かに、私達の周辺には、コンビニエンス・ストア並びにファースト・フード、飲食店という食のインフラがあり24時間、危険を冒さず多様な “食” を簡単に仕入れる事が可能となり、食料獲得は生死と直接結び付くものではなくなってしまったと感じます。 しかし、生死という人類にとって壮大なテーマを日々考慮しなくとも良い結果になった反面、現代人は過食気味となり肥満体質の人間が急激に増加し、現代病によって蝕まれるようになりました。 そして、この食のパラダイム・シフトによる状況は、メディア、特にウェブの興隆によってもたらされた情報化社会に於いても同様のアナロジーを見出す事が出来ます。 現代では膨大な情報による肥満が増加し、何かしらの新陳代謝が必要になって来ていると感じます。 (単なる情報だけでなく twitterやFacebookでは感情伝播に因るより内的な肥満も起っているかもしれません) この情報肥満への新陳代謝促進はいくつかの潮流を見せていますが、クリエイティブ業界で言えばクラフトマンシップへの憧憬が挙げられます。 農業や伝統工業に多くのクリエーターが熱い眼差しを送るのは、クラフトマンシップがこうした肥満を解消する新陳代謝として役割を持つからだと推測されます。 脳が入手する膨大な情報を咀嚼する為に、肉体、手や足を働かせるのは実は理に適った行為だという事を先生から改めて学びました。 また、情報自体が過剰摂取気味なので、こちらを制限する事も忘れてはいけませんね。 メタボ化した社会へ オルタナティブな排泄行為を提案する 個人や社会の様々なレイヤーでメタボ化した現在、クリエーターはどのような役割を担っていた・いくのか少し考察をしたいと思います。 アーティストは、過去もそうであった様に、個人レヴェルや集団による運動で、メタボ化した社会へ新しい代替として排泄行為を促す存在であり、その役割の一端を担います。 例えば、私が個人的に大好きな写真家ライアン・マッギンレーは、アメリカ社会が嘗て憧れたユートピアを現代版パラレルワールドとして写真という媒体を通じて現代社会に提案しています。 その提案によって、多くの人間が接続し、共感する事である種、社会の鬱憤を咀嚼し、ガス抜きをしていると言えるかもしれません。 また、1960年代に活動の興隆を極めた 建築家 黒川紀章氏や菊竹清訓氏らによるメタボリズムも、都市・空間に対するオルタナティブとして都市、人口の新陳代謝を促して来ました。 近年で言えば、ウェブメディアによる情報社会への新陳代謝としてリアルスペースでのイベントブームも挙げられるでしょう。 今後は、この潮流が一部の人間や一部の地域(東京という都心)だけでなく、小さなトリムタブと成り得る一個人、一地域が新陳代謝を促すプロジェクトを牽引する事になると思います。 (満腹法人)芸術栄養学さんによるアミノ酸スコア100のフード 異領域を横断し編集する意義 今回の SYNAPSE Classroom にはゲスト生徒役でメディアという立場から参加しましたが、他にも、栄養士やフードコーティネーター、デザイナーといった専門家が同様に招かれました。 この真意には、SYNAPSEのコンセプトである知と他分野の属性を交流させ、どのようなコラボレート、応用の可能性を見出せるかというテーマが根底に流れています。 例えば、今回、私が参加して持ち帰ったものは、情報による肥満化とその排泄行為、新陳代謝としてのクラフトマンシップの流れという食から得たアナロジーを学びました。 ウェブにタグ付けという属性付けがありますが、個人的には、このような異分野からの学びは、それぞれの接点によって産み出される新しい属性=タグを生み出す事と、その新しい属性によって既存の硬直化した社会構造、業界構造へ大きな新陳代謝を促す機会とし、新しい情報やお金の循環を創り出す事だと考えています。 今後も多くの分野の方に、イベントやメディア、刊行物を通じて、SYNAPSE project の輪が拡大する事を願っています。 最後にこうした機会与えて下さった高橋迪雄先生、SYNAPSEメンバー、ゲスト生徒役の皆さん、お客様に心より感謝いたします。また、次回のSYNAPSE Classroomを愉しみにしてます。