text by takuma hiramatsu
photo by takuma hiramatsu
過去ソビエトが描いていた未来、思想や意義は、
今でもモスクワの地下には眠っている。
我が国とモスクワの公共交通機関のデザインを比較し
そこから見えてきたロシアの性格と実態をご紹介したい。

駅や空港などの公共交通機関における空間デザインは、
国々の特色や国民性が反映され、様々な要素によって建てられる。
私は交通機関というものは、その国や地域の特性、及び性格が
デザインとして明らかになる場所だと思う。
公共交通機関を作る上で、どの概念的要素を盛り込むかによって、
利用者に与える影響が変わってくるが、そこでのプライオリティの決め方は様々だ。
東京の地下鉄は、利便性、経済性、安全性などを特化した駅が多く
公共性も長けていて、衛生面でも配慮が比較的重要視していると感じるが、
ロシアのメトロは、アイデンティティ、多様性、審美性が長けている。
社会主義リアリズムの様式に基づいたデザインが多く残るモスクワのメトロ。
その豪華な装飾は独特の雰囲気がある。
革命広場駅にある「幸運を呼ぶ犬の像」
この犬の鼻先をなでることによって願い事が叶うらしい。
多くの人が鼻先を触り、一種の風習のようになっている。
この犬の銅像を、芝浦工業大学のパブリックトランスポーテーションの概念要素の研究に当てはめてみる。
研究の内容は、公共交通機関が存在する上で、26項目と4側面の概念的要素間の関係性の把握し、
必要側面に対して様々な要素や手段の関係性を明らかにしたものだ。
【継続性】は【多義性】と関連があるとしている。継続性をデザインに取り入れるということは、
実現した後できるだけ長く持続して使われる環境をデザインすることであると述べている。
そうすれば、人間との関係を長く保つことにつながり、そういったモノや空間ほど多様な意味付けがなされ
人々にとって欠かせない存在になるとしている。多様な人々によって使われ、
意義を発見してもらうことに価値があるとしている。- 引用
正にこの犬の銅像は、その現れではないだろうか。
モスクワメトロの多様性という面では、核シェルターとして使用できるよう、
考慮して建設されたと言われる。
それを納得させる深さまでエスカレーターは地下の奥へ奥へと利用者を運ぶ。
第二次世界大戦、冷戦時代、などの時代性もこの辺りから見られる。
当時、戦勝という時代性を取り入れたキエフスカヤの壁画。
軍の武力行使を貢献として扱い、それを讃え、形に残す。
母国が持った思想、権力を国民の日常にとけ込ましている。
社会主義リアリズムの現れだろう。
日本には戦勝記念塔や、武力行使自体を讃えるモニュメントが存在しない。
原爆ドームをはじめ、慰霊碑という負の遺産は数多く見られるのは、
戦争というものにたいして、日本人は悔やみ悲観的に捉えるという表れだと認識している。
同じ敗戦国、ドイツは戦勝記念塔を建設しているのに対し、
我が国は勝利という事に対して讃え、形に残すという過程をとっていない。
歴史上の「勝利」という存在が教科書の文面だけの存在で留まるのと、建築や絵画、
モニュメントとして存在するのでは、心理的側面で違った刺激になるのではないだろうか。
しかも、日常的に使用する交通網に残っているのでは、
やはり歴史を受け取る側としては、意識が異なってくる。
「勝利」「繁栄」という事に対して意識を持ち、それに近づこうとする「国民的意識」は民意として必要不可欠の要素であり、それを促す思想やデザインは、モスクワのメトロにインストールされている。
特に現在の日本は、この国民的意識改革が重要だと私は感じている。
モスクワメトロの交通網の構築は、交通的利用という要素だけではなく、
様々な概念、美的財産、歴史、イデオロギーを残してきた。
これらは遺産であり、この先も変わらず存在し、
国民の人格を構築する上で重要な影響を与える都市環境装置である事に間違いない。









































