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Set of Good Music for U – June




 詩人は、自我を分割した他者の声を、その内部から聞き、神秘家は外からの声として聞く。
一方は自己のイマジネーションとして、そしてもう一方は天啓として。(ジャック・デリダ)

人もまばらな公園や森を散歩するのは、すこぶる気持ちが高揚する。静寂と胸を早く打つ動悸が共存するかのような錯覚に陥るせいかもしれない。
二つの異なる項から、私達が得るインスピレーションは多大なものだと憶う。
生と死、男と女、人間と自然・神、美と醜。私達の体内から立ち上がる内的なイマジネーション、外的な天啓とも言うべき超自然物。対称性が強い程、両者は別け隔てられ、または常に混淆している。
今回の音楽特集では、二項対立に於ける人の成せるイマジネーションの一旦と自然から齎される天啓、美しいものが人間主体を世界と一時的に和解させるものとして定義出来るのかというテーマで音楽を紹介したい。



Sigur Ros – Olsen Olsen (Heima)


 4年ぶりとなるアルバム『Valtari』のリリースだけでなく、『シガー・ロスの世にも奇妙な映像実験』(‘Valtari’, Mistery Film Experiment)と題して、12人の映画監督や映像ディレクターに同じ予算を渡し、今作を聴いて各自が感じたまま映像作品を制作するプロジェクトの開始など、まるで冬眠から覚めたような活発な活動を行うシガー・ロス (Sigur Rós)。
 ニューアルバム『Valtari』からではなく、私とシガー・ロスとの最初の遭遇である、懐かしい彼らのドキュメンタリーヴィデオ『Heima』から1曲”Olsen Olsen”をセレクトした。
 シガー・ロスのボーカリスト ヨンシー・バーギッソンの伸びやで広い音域を聞いた瞬間に、背筋に心地よさと不安にも似た焦燥を感じたのが、最初だ。同性愛者をカミングアウトしているヨンシーだが、男性性と女性性を併せ持つからこそあのような広域な感覚を持つのだろうと憶う。
 『多くの人々は1オクターヴの人生しか生きていない』と語ったのは、8オクターヴの音域を持つロイ・ハートだが、『狂気のための8つの歌』で披露したその恐ろしいまでに広い音域は人を歓喜だけでなく不安を齎す。
そこには、私達人間が、超然的な自然や神に対する畏怖や崇高な信仰心といった宗教的色彩が色濃く含包されている。この宗教的色彩がシガー・ロスのシガー・ロスたらしめるエッセンスとしてドキュメンタリーヴィデオ『Heima』には散りばめられている。
(Recommned by arata sasaki)

Sigur Rós : www.sigur-ros.co.uk




Steve Reich – Different Trains (Europe – During the war)‬


 ミニマルミュージックを代表するアメリカの作曲家スティーヴ・ライヒの作品で、1990年に『ディファレント・トレインズ』でクロノス・カルテットと共にグラミー賞クラシック現代作品部門を受賞している。ライヒの作品は、フレーズの繰り返しを多用したり、ミニマリストであるという見方が一般的だが、純粋なミニマリストのスタイルには収まらない作品も多数手掛けている。
 作品制作のきっかけは、ライヒが1歳の時に両親が離婚し、第二次世界大戦の頃、ロサンゼルスに移り住んだ母親に会うために、たびたび家庭教師の同行を得て汽車で旅行をしており、その際に「もし、ユダヤ人である自分があの時代にヨーロッパにいたらどうなっていただろうか?おそらく、強制収容所行きの、全く違う汽車(Different Trains)に乗ることになっていたのではないか?」と考えた事だという。
 録音されている5人の音声の一人、ライヒの家庭教師だった女性ヴォージニア(Virginia:録音当時70歳)は、当時ライヒと共に列車で同行した頃の思い出を語ったものである。時代背景を直接的に想起させる彼の手法やアイデンティティは、今後の現代音楽においても注目していきたい。
 (Recommned by takashi kawada)

Steve Reich : www.stevereich.com




BOHO


 ポーランド出身のフォトグラファー「Jucho」が、Canon EOSシリーズを用いて制作したパーソナル・ワークより。
 使用されている楽曲は、同国の中でも最も古い都市の一つであるヴロツワフを拠点とするバンド「Mikromusic」の『Thank God I’m a Woman』と、ウィッチ・ハウスの旗手「Balam Acab」がデビュー作として発表したEP「See Birds」からの1曲『Dream Out』。
 日常の些細な一つ一つがまるで奇跡のように感じられ、心が穏やかになる映像。女の子が遊び疲れて帰宅する途中に階段でつまずくシーンは、何度観てもつい微笑んでしまう。
(Recommned by goshi)

jucho:www.jucho.pl
mikromusic:mikromusic.pl
balam acab:www.myspace.com/thebalamacab




Brandt Brauer Frick Bhatti – Schwan / Audible Approaches For A Better Place

 解放の最も過酷な形式は、常に、自己解放ではないだろうか。
 数年程前に出会ったブラント・バウアー・フリック(Brandt Brauer Frick)の第一印象はあまり良いものではなかった。ドイツ特有のミニマムで強烈なダウナー感を持つ曲『Caffeine』は人間の可能性を封じる社会アーキテクチャを痛烈に批判した作品である。
 ブラント・バウアー・フリックという名は、私のファバリット・ミュージシャンの1つであるエフタークラング(EFTERKLANG)によって偶然結びつけられる。きっかけは、イスラエルの拠点を置くエレクトロ・ミュージックレーベル「c.sides」がリリースしたコンピュレーションアルバム『Audible Approaches For A Better Place』に両者の名前が並んだことである。2枚組CDの最初の曲がこの動画『Schwan』。この動画を皮切りに代表曲である『BOP』で魅せられ、彼らの特長はアンサンブルであり、ライヴパフォーマンスだと私は強く憶うようになった。出会った当初はこの批評性を持つイデオロギー形成が理解出来なかったが、 人間主体に背を向けるようになった世界の中で人間と自然との何らかの暫定的遭遇が必要不可欠だと感じるようになった。人類というのは、いやらしい害獣であるという観点が少なくとも受け入れる覚悟がない限り、人間のいかなる改革もする必要がないのではないだろうか。
 (Recommned by arata sasaki)

Brandt Brauer Frick : www.brandtbrauerfrick.de

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