
text by arata sasaki
側面的な試みが中心を担うようになる。
支流だと考えられていたものが本流となる。
袋小路に抜け道ができ、ある日、本道となる。
“あたりまえでない” のことを “あたりまえ” に、
先人が営んできたから “あたりまえ” という奇跡が存在する。
トラックメーカー nujabes の悲報が届いたのは、昨年2010年3月も半ば、未だ寒気が辺りを包む時期だった。
享年36という早過ぎる死は、音楽を愛する人々や、構造に抗い闘争する人間へ深い悲しみを伝搬した。
nujabes と、そして死後も継続されているレーベル Hydeout Production は、一貫とした態度を崩さず見えない権力構造と闘っている。
そして、早1年半が過ぎ、僕は、先日2011年12月3日にリリースされた nujabes の珠玉のラストアルバム『Spiritual State』を聴き、その姿勢がしっかりレーベルにDNAとして埋め込まれたものだと確信を得る。
過剰な誇張や宣伝は一切せず、純粋に音だけで勝負し続けた nujabes。
nujabes が生前、言語として構造を批判するのではなく、”あたりまえ” の態度として示し続けた哲学は、このアルバムへアートピースとして息付いている。
Luv (Sic) Part 4 Featuring Shing02 > itunes store
芸術は、時代性、特に構造によって大きな影響を受けて来た。
音楽で言及すれば、宗教音楽に始まり、宮廷音楽、現代では資本主義社会の骨子を体現するかのような振る舞いを見せ、権力構造と蜜月を共にしてきた。
見えない支配力を持った権力構造は、ずるずると飲み込むように、次第に純然たる音楽も取り込み、後には芸術作品と称した骨抜きの類似品があぶくのように顕われて散っていった。
しかし、「3.11」という未曾有の大震災は、日本に物質的な損害を齎しただけでなく、福島第一原発発電所の事故を発端に、科学と国家のいびつな関係や知の操作、隠蔽体制を露にし、更に、このような問題が様々な業界体制の氷山の一角であることをまざまざと白日の下に曝した。
こうした構造的装置を僕らは身を持って知る世代である。
そして、僕らの認識は瞬く間に、羽を伸ばし、巨視的にこれらの構造を眺めるに至っている。
世界はいま、加速度的に、綻びが見え始めた構造を躍起になり縫合するもの、もう旧体制には戻れないと悟り既存の構造に対する新しいオルタナティブを模索するもの、という二極化が進行し、二つのテーゼの鍔迫り合いが大きく渦巻き蠢いている。
音楽を取り巻く環境はこうした闘争を顕著にしている一つだが、そもそも、有史以前の音の発生からインターネットでの音楽配信という今日まで、現代に繋がる純然たる音楽の旋律は途切れる事なく脈々とハーモニーを奏でて来た側面も併せ持つ。
音と人間の関係は、確かに、時代と共に変遷して来たが、その純粋・純然たる音楽の真理は現在も古来も変わらない。
音によって高揚し踊り出す人間もいれば、静寂のような音によって精神を研ぎすます人間、音によって愛を伝える人間もいれば、悲哀を嘆く人間もいる。
地球という惑星は絶えず音楽が生成される巨大な劇場であり、それ故に音楽で繋がる可能性を持つ素晴らしい星だ。
音は、僕らのエートスへ立脚させ、時にはその外側へ羽を付けて運んでくれる大きな両翼でもあるし、
時として内省への呼応として、時には外延なる呼応として僕らを救ってきた。
純然たる音と権力的構造はこれからも闘い続けるであろう。
しかし、側面的な試みが中心を担うことも、支流だと考えられてきたものが本流となる時もある。
不可逆的に見える権力構造の抜け道は、僕らの智慧と心象の結びつき、行動によって拓かれる。
nujabes のラストアルバム『Spiritual State』は、哲学、態度として時代を経ても変わらず、抜け道に続くものを奮い立たせるだろう。
hydeout-tribe (online store)
nujabes が遠望した心象世界が、次世代を紡ぎ出す事を祈りつつ、
今、僕がささやかながら出来る “あたりまえ” を貫き、100年後の未来人に、この記事を残せれば幸いだ。
沈黙の次に美しい音の一つに敬意を表して。
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Spiritual State
nujabes
¥ 3,000 (in tax)
Label : hydeout productions
Release : 2011/12/3
Tr1. Spiritual state featuring Uyama Hiroto
Tr2. Sky is Tumbling featuring Cise Star
Tr3. Gone Are The Day featuring Uyama Hiroto
Tr4. Spirale
Tr5. City Light featuring Substantial & Pase Rock
Tr6. Color of Autumn
Tr7. Down on the Side
Tr8. Yes featuring Pase Rock
Tr9. Rainy Way Back Home
Tr10. Far fowls
Tr11. Fellows
Tr12. Waiting for the clouds featuring Substantial
Tr13. Prayer
Tr14. Island featuring Uyama Hiroto&haruka nakamura
http://hydeout.net/
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