Recommend
Recent Article
Open Close

Carsten Nicolai – Grid Index, Moiré Index

index.jpg


Grid Index, Moiré Index (c) 2011 Gestalten, Berlin

text by goshi uhira

この2つの白い物体を初めて手にした時に感じた、
何とも表現しがたい高揚感のようなものを今でも鮮明に覚えている。

どう見てもこの2つの物体は「本」なのだが、
一度手にした人の多くが、これらを単純に「本」として括るのには、多少なりとも抵抗を覚えるだろう。

両書が、様々な文脈をもって我々の手元へと届けられてから少しばかり時を経た現在、
ここで改めて、著者であるカールステン・ニコライという人物を掘り下げながら、
彼が届けたこの2冊に関して考察していきたい。

カールステン・ニコライは、ドイツを拠点に活動を行うアーティストだ。
「アルヴァ・ノト」や「ノト」という名義でも音楽活動を行い、電子音楽のレーベル「ラスター・ノートン」を主催する。
現代アートとサウンドアートの両面で国際的に高い評価を得ている、希少な存在の一人だ。
日本では、坂本龍一との共演で一躍その名を広めた。
池田亮司とのユニット〈cyclo.〉でも国内外に多くのファンを持つ。



GridIndex_Press02.jpg

Grid Index (c) 2011 Gestalten, Berlin


作風や彼について書かれた文章などから、その活動に対し、難解で取っ付き難いという印象を抱く人も少なくない。
だが、彼が創造の根源に置いているものは、我々と非常に身近な存在である『自然』そのものである。
彼は、人間を「全てのヒエラルキーのトップ」と捉えず「自然のごく一部」と捉えている。
その為か彼の作品からは、少なからず日本の「侘び・寂び」をも連想させる「潔さ」を感じる。



MoireIndex_press01.jpg


Moiré Index (c) 2011 Gestalten, Berlin

事実、カールステン自身も日本の文化に強い関心を抱いている。
過去には、日本庭園における抽象的・哲学的な表現に興味を持ち、ランドスケープを学んだり、
日本人の解釈の仕方や素材の扱い方にも美学を感じ、自身にも共通項を見出している。






作品の形態は、インスタレーション、音楽、映像、彫刻、建築など、実に様々だ。
それは、カールステンが一定のジャンルに拘らずに、
「あらゆる表現手法を総体的に一つの『作品』として捉えている」姿勢の現れなのである。

そんな彼の生み出す作品は、どれも非常に洗練された装いで我々の前に現れる。
現代アート/サウンドアートの学者クリストフ・コックスは、彼を「ネオ・モダニスト(新近代派)」と位置付け、ドナルド・ジャッドやアグネス・マーティンのミニマリズムとの共通項を見出した。

しかし、最小限の要素でシンプルなフォルムを追求したミニマリズムとカールステンの作品との間には決定的な違いがある。
それは、彼が「身の回りの『自然原理』やその背後にある『構造』と『認識プロセス』を、
あらゆる領域間を横断しながら、一つの『モデル』として呈示すること」を活動の中心に添えている点だ。

彼が発表した《Grid Index》と《Moiré Index》という2冊の本は、様々な分野で衝撃をもって受け止められたが、彼の活動を紐解いていくと、この2冊の出現はごく自然な流れであったと頷ける。

《Grid Index》は、直線によって形成されるグリッドや幾何学模様の『モデル』であり、
《Moiré Index》は、線や点のズレによって生じるモアレ現象の『モデル』なのである。



GridIndex_Press06.jpg


Grid Index (c) 2011 Gestalten, Berlin

さらに特筆すべきは、デジタルファイルを収録したCD-ROMが同封されていること。
購入者は、各書に収録されているグリッドとモアレのグラフィックデータをあらゆる場面で自由に利用できる。
カールステンは今回、「本」という形態を選ぶことによって『モデルの共有』を体現した。
我々がこれを利用しない手はない。




MoireIndex_press05.jpg



Moiré Index (c) 2011 Gestalten, Berlin


かつて、ジョン・ケージは「人々が本を読む時、その人は実は演奏家なのである」と述べた。
カールステンが作り出した2冊の本のページを捲っていくと、次々に〈grid〉と〈moiré〉による波が押し寄せてくる。
そして、彼が1996年にノトとして発表した《spin》にも似た、静寂のループサウンドを聴いている様な錯覚に陥る。
その錯覚は、我々に「本」の持つ全く新しい価値と可能性に気づかせてくれるだろう。


GridIndex_Press08.jpg


Grid Index (c) 2011 Gestalten, Berlin


続編の構想について、彼はこう述べている。
「今はあまり明らかにしたくないのですが、おそらく、後、もう2つほど可能なインデックス企画があると言っておきましょう。
一つ目は三次元のソース本。二つ目は音と視覚メディアの作品制作をしている友人アーティストとのコラボレーションになる予定です。
(中略)『サイクロ・インデックス』という書名で、サウンドイメージのアーカイブ集になるでしょう。
来年に出版できればと思っています。お楽しみに。」―–Interview with Carsten Nicolai by Youyoung Lee for Gestalten
(c) 2011 Gestalten, Berlin



MoireIndex_press11.jpg


Moiré Index (c) 2011 Gestalten, Berlin



タイトルから予想すると、友人アーティストとは池田亮司のことだろう。
カールステンは、彼とのユニット〈cyclo.〉を通じて、音を直接ビジュアルへと変換することに取り組んできた。
そのアーカイブ集ということだろうか。
想像しただけでも、鳥肌が立ちそうな内容である。
こちらも出版まで非常に待ち遠しい。

現在発売中の2冊については、下記のリンク先より購入可能だ。

《Grid Index》
www.amazon.co.jp/gp/product/3899552415
《Moiré Index》
www.amazon.co.jp/gp/product/389955308X

ぜひ一度、彼の呈示する『モデル』を体験してみてはいかがだろうか。


-

Carsten Nicolai
www.carstennicolai.de/

Alva Noto
www.alvanoto.com/

Gestalten
www.gestalten.com/

-


Concierge
Editor:
avatar

hitspaper

Recruitment