1─10 Q1/20



 2020年四半期(Q1)によく読まれた HITSPAPER の記事「1-10」を紹介しつつ、その傾向を編集部で分析、今後の在り方を共有したいと思い、実験的にこのような企画を始めてみた。読者の皆さんに好評ならば、また2Qの終わりに、そして、年の終わりには一年を振り返る企画を試みようかと考えている。

 さて、本企画にあたり、初めにお伝えしておかなければいけないのは、私たちが取り上げる記事はかなり偏りがあるということだ。そもそも HITSPAPER は、シーン全体を網羅的におさえていくメディアではなく、時代のオルタナティブと感じたものをある種 (すべての記事とは言わないまでも) 恣意的に取り上げてきた。そのような意味では、掲載されているコンテンツそれ自体が時代へのメッセージとなるような、キュレーション・メディアだと言える。すでにエスタブリッシュされたものではなく、なるべく既成のものへのカウンター、その種や芽を世に出していく、という視点で掲載されたものという認識してもらえれば嬉しい。

 また、本企画は、滞在時間がデータとして解析できないSNSでの閲覧数は含めていない。私たち HITSPAPER は、どれだけ深く読まれたかを重視しているので、平均滞在時間が読者との関係性において大切な要素だと考えている。ちなみに下記で挙げるコンテンツは、アクセス数も高いが、平均滞在時間も最低でも2分、長いと5分30秒ほどある (HITSPAPERでは、良く読まられている記事ほど滞在時間が長いという特長がある)。SNSからのコンバージョン率をみても本当に熱心な読者の方々がいて(本当に有り難いことです)、わざわざサイトに訪れて、じっくり読んでくれているのがわかる。

 前置きが長くなってしまったが、どれだけ深く刺さったのか、行動に影響を与えたのかという深度を大切にしてきた私たちとして、まずこれらのことをお伝えしておきたかった。



2020.1.1 – 2020.3.22 

1 『ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと』

2  [column: 02] Our Way to Creator – クリエイターのオリジナリティについて

3  [column: 01] Our Way to Creator – クリエイターとして独立するまでに学ぶべきこと

4  子どもから大人まで、「アート」と「創造性」の要素を取り入れた、スマートフォンで学べるプログラミング教材「easel」

5  [column: 00] Our Way to Creator – クリエイターとして独立したいあなたへ

6 素材を前面に見せるミニマルなデザイン、アウトラインの両義性が特徴、ドイツ発のユニセックスブランド “POLYPLOID” 20SS COLLECTION

7  あるものが別の何物かへ移行する過程。そこにあるまた別の何か。その不完全な透明性。田中聡一朗の個展「Transfer,Transparency」

8  ミームレーベル「e6849b」によるホームレス集団のゲリラショー

9  ブッカー賞ノミネート作品、グラフィックノベル「sabrina」

10  アイコニックな形状と自然素材の質感が織りなす美しさ、スペインの花器デザイナー”Valeria Vasi” 日本初個展



 読者の方々が実際どのような職種で、どのような環境に置かれているのか、アナリティクスデータからは読み解けないが、これらから透けて見える大きな特徴として、『ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと』や私たち発信のコラム「Our Way to Creator – クリエイターとして独立したいあなたへ」などがよく読まれているのは、読者の皆さんがこれからどのように仕事をする上で戦っていくのか、戦略から方法に至るまで、実践への関心が集まっていることが窺える。これはここ10年くらいの間で最も変化してきたことかもしれない。お金を稼ぐことは大切ではあるが、体験や暮らしの在り方が見直され、ストレスなく、豊かな時間を確保する為にフリーランスや自分たちでスタジオを立ち上げる人が増えてきた背景が大きいのだと思われる。スモールチーム、あるいは一人でゲリラ的に戦っている人が読者の方々の中でも多くなってきていると感じるので、今後このような声に応えるコンテンツを増やしていきたいと考えている。
 社会の問題意識として、HITSPAPERが追いかけてきたアティチュードの一つに「ジェンダーレス (もっと拡張していけばダイバーシティやLGBTQなど)」が挙げられるが、ユニセックスブランド “POLYPLOID”やスペインの花器デザイナー”Valeria Vasi” 日本初個展など、これまで社会を強く支配していたマスキュリニティに対するオルタティブに注目が集まっているようだ (『ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと』の著者も女性のクリエイティブチームだ)。もちろん、女性だから選んでいるということは一切なく、良い作品という評価から入り、気付いたら作り手が女性だったということも含めて、十数年前よりも確実に優秀な女性の表現者が増えてきた感覚がある。なぜ素晴らしい女性の表現者が増えたのか (あるいは隠れていた)、はまた別の機会に譲りたいが、#Meetoo運動などに代表される、女性への抑圧へのバックラッシュ、共感を前提とする相対評価社会の確立など多くの背景がが絡み合っているようだ。ちなみに、HITSPAPERを始めた頃は、読者の男女比構成 (もはやこの括り方自体がナンセンスかもしれない) が「7 : 3」だったのに対して、現在ではほぼ「5 : 5」の同等となっている。
 また、HITSPAPER が大切にしてきたこととして、”異なる領域にブリッジをかける”、ということがあるが、田中聡一朗の個展「Transfer,Transparency 」やスマートフォンで学べるプログラミング教材「easel 」、ブッカー賞にノミネートされたグラフィックノベル「Sabrina 」などが良く読まれているのを見ると、それぞれ横断する領域は異なるものの、ブリッジをかけるものに対して、読者の方々も興味を持っていることが窺える。多くの領域がレッドオーシャン化してしまった現在では、当然のことかもしれないが、現代の両生類的なエッジエフェクトの中でどのように新しいものを作り、領域を作り、生存競争をしていくのか。それらを模索するクリエイターの存在をひしひしと感じる。
 ミームレーベル「e6849b」によるホームレス集団のゲリラショーにも触れておきたい。この記事は、昨年の春に掲載されたものだが、毎月少しずつアクセスがあり、約一年経過した今でも定期的に読まれ続けている。カルチャーが細かく分断され、バブル化 (フィルターバブル化) する中で、カウンターカルチャーが行き場を失くすのではないかと心配していたのだが、潜在的にこのような動きに興味を持っている人が多いことに驚かされた。小さなチームが巨大なものと対峙する上で、カウンターという戦法は非常に強力だが、メインストリームがすでに興味深いことを行い、メジャーとアンダーグラウンドという言葉や枠組みが、ほとんど意味を持たなくなっていきそうな時代において、ミームレーベル「e6849b」のような活動が今後どのように受け入れられていくか、あるいはアップデートされていくのか、私たちとしても興味があるし、応援していきたいと考えている。
 良く読まれているコンテンツをざっと概観してみた。前述したが、HITSPAPER はクリエイティブシーン全体を網羅的に追っている訳ではなく、あくまでオルタナティブという視点でキュレーションをするメディアという立ち位置だ。だから本企画は、非常に偏った、小さなバブルの中から描き出されたものではある。おそらく読者の中には、違った視点で世の中の流れを認識しているかもしれない。あなたが所属するコミュニティや地域、文化では、全く違う評価や見方ができる可能性の方が高いだろう (そもそもキュレーションするものが異なってくる)。20年代に入り、おそらくその差異はどんどん広がっていくと予想される。だからこそ、私たちはこのような企画をスタートし、ある視点を提示/共有したかった。つまり、これから来る未来に備える為、ディスカッションする為、俎上に載せたかった。それはとりも直さず、スモールチーム、フリーランサーなど、小さいながらもオルタナティブを意識して戦っている人たちと共に情報を共有し、これからやってくる新時代への準備をしていく決意表明ということでもある。2020年からコラム『クリエイターとして独立したいあなたへ』をスタートしたり、積極的に実践書『ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと』を取り上げたりしたこともその一環である。少し先になるかもしれないが、いずれ皆さんとご一緒できる計画も立てている。まだ私たち自身不明瞭なことが多いが、そのような計画を水面下で進めていることお伝えして、本稿を終えたい。

(HITSPAPER 編集部より)