Official Site: www.supportsurface.jp
Interviewer: Arata Sasaki(HITSPAPER)
1999年ファッションデザイナー研壁宣男氏によって立ち上げられたレーベル「サポート・サーフェス」。
2006年東京コレクションでコレクションを発表して以来、東京の次世代を担うファッションブランドとして認知されて来た。
その女性の美を追求し続けて来た作品は、表層的なコンセプトありきのデザインではなく、日常の試行錯誤や葛藤によって産まれた非常に有機的な造形物だ。
今回は、興隆するファストファッションの真っただ中にあって、代表でありデザイナーである研壁宣男氏に、ファッションの未来や消費活動の在り方など、フィジカルとメタフィジカル的な観点で話を伺った。
HITSPAPER: ファッションとはどのような形で出会ったのでしょうか?
Norio Surikabe: ジェネレーションによってファッションの出会いは多種多様ありますが、私の場合は高校生の時でした。
ローカルな進学校に通っていたのですが、入学当初に、一流大学に進学するような人達とは根本的に脳の構造が異なっていると感じ、彼らとは勝負にならないと。
負けず嫌いでプライドが高い(笑い)自分は、それだったら、幼年期より、得意で好きだった美術や藝術関係に進もうと思いました。というわけで受験勉強はひたすらデッサンでした。
当初はおぼろげにグラフィックデザイン等の平面芸術志望でしたが、80年代の後半は、国内でDCブランドブームが全盛を極めていた時代でもあり、10代の多感な時期の私には、ファッション業界は輝いて見えていました。
ファッションデザインは一般的に、デザイン画として絵を描く事から視覚伝達をしていく訳ですが、それ以上に布という固形ブロックではない、個体だけど人が着用しないと形が存在しなかったり、個体だけど動的で液体のような感覚をデザインするという事に興味を抱いたのです。
HITSPAPER: 例えばあるプロジェクトにおいて、それぞれのプロセスを状態変化で表す時、最終的なアウトプットは固体で喩えられる訳ですが、アウトプットである服が液体として解釈されるのは面白いですね。
Norio Surikabe: インダストリアルデザインや建築物など形が定まっているアウトプットは固体的と言えるのかもしれませんが、例えば、音を気体として表現するような感覚に近いのかもしれません。
服のデザインに於いては、なびくようになびくし、傾ければその方向に傾く、当然着用する人間によって視認性も変化するので、独特なデザインの概念なのだと思います。
HITSPAPER: ご自身でブランドを立ち上げようと思ったのは何故ですか?
Norio Surikabe: 20代前半より海外のメゾンで働いていましたが、当初より将来の独立を見据えていた訳ではありません。目の前にある仕事をこなしていた事だけで精神的にも時間的にも一杯一杯でした。しかし、海外生活が長期に渡るに連れて、経験における技術的な習得と平行に、東洋人、日本人であるという自分のアイデンティを見つめ直す時間、そして、今後何をしていくべきか。意識の内に培っているアイデンティティ、いわば筆跡のようなものを、どのように表現しようかという壁にぶつかりました。
欧州で歴史のある生活様式に基づいたファッションの洗礼を受けつつも、日本人である自分が、それに納得し、本質を気付かされる部分と、オリジンの違いからくるある種の違和感の共存。その葛藤の中で、有りのまま自分を表現していきたいと思い始めた訳です。
HITSPAPER: 有りのまま自分の表現手段としての服造りとはどのようなものなのでしょうか?
Norio Surikabe: とにかく手を動かす事です。
思考に頼ってしまうとでは、頭の中で渦巻くものがあって思い悩むんですが、結局、思い悩んでいる時間があったら手を動かしていた方が効率が良いのです。自分の場合。
立体と向き合っていると、頭では想像出来なかったものに出会うことができます。
想像外のものに出会える時は、本当に嬉しい瞬間です。
しかしその度、いつネタが尽きるんだろうという不安にかられますけど。
しかし、それは音楽で言う楽譜の並べ方というメロディーメイクに近いものがあって、それは、無限な訳です。
新鮮で美しいメロディーは限りなく有能な作曲家によって今後もつくられていくでしょう。その感じに似ています。
プロセスとしては、現代を生きていく以上、世の中の空気感を自然に感じている訳ですが、その空気感にに対して同調していかなければいけない部分と、あえて反発した方が良い部分は思考回路の中で、濾過でしていく訳ですが、その思考とは違う次元で、同時期に手先がどう動いてくれるのか、それがどうリンクしていくのかが自分でも想像外で面白いところです。
手を動かすという事は、自らの精神状態や四季、時代性など日々変わりゆくバイオリズムに非常に左右されるもので、そのバイオリズムに思考や時代性が同調しながら、少しづつ実物の物が出来上がっていく感じです。
ですから毎シーズンのテーマは作業の始めには殆ど決定している事はありません。
コンセプトありきでスタートするブランドもあると思いますが、私達の場合、曖昧な空気感からスタートして、手と頭を絶えずリンクし動かし続ける事で徐々に商品というかたちに昇華させていきます。
HITSPAPER: 精神分析学者のジークムント・フロイトは無意識というキーワードで潜在的な精神状態や感覚から様々なものを炙り出す訳ですが、非常に近しいものを感じました。
Norio Surikabe: アイディアが急に思い付くことは殆ど皆無で、いつも漠然とした空気感から生まれてくる物です。
また、新しい物を造り出す大きな鍵になることは、現在進行のものを飽きるまでやり続けるという事です。
飽きるというのは重要な事で、終始、同じ物と向き合っていたら、必ず人間の心理的過程で飽きる訳で、その反動が次のステップに繋がる大きな原動力になります。
ですから、現行の作業を主に、写真整理、カタログレイアウト、レタッチ、ショー映像の鑑賞。内省を繰り返すことで、潜在的な精神状態を明確に感じられるようにしているのかもしれません。
縦軸が過去の自分達の歴史(潜在的なもの)だとすると、横軸が現代の空気感、この二つのベクトルの調整はかかせません。
HITSPAPER: 過去と現在を比較して、仕事のプロセスは異なってきましたか?
Norio Surikabe: 基本的には変化はありませんが、ただ、気を付けているのは、衣服の枠という考え方についてです。
80年代のDCブランドブームの当時は、日本の歴史上洋服という枠自体が曖昧な時代で、枠外の表現、業界用語でいわゆるアヴァンギャルドが、新鮮な時代でした。要は生活基盤の中で基本的な洋服文化が浸透しないまま、応用に行っちゃった訳です。西洋の衣服文化に対するブラックジョーク的な意味で。
それが新鮮に映った時代だったのですね。
しかし、現在はクオリティの高さや女性自身がその衣服を身につけたいのか、美しく演出してくれるものなのか、更に価格が見合うのか等より熟練としたある種シビアな消費者の視点があります。
そうのような意味では、現在は洋服という枠の中での真っ向勝負の時代と言えるかもしれません。
HITSPAPER: 現在、80年代のDCブランドブームと比較しても世の中が多種多様となってきました。
社会的な観点から見て、ファッションブランドをやり続けていく、役割は意義は何でしょうか?
Norio Surikabe: 3.11の震災後に改めて創作活動においてのいろいろな意味で考え直す自問自答がありました。本当に被災者の方には失礼な事かもしれませんが、原点を見直すという意味で、良い機会になりました。要略すると、”普通”に生活できるいう感謝と、当たり前普通に生活出来ている事が、いかに絶妙な社会組織のバランス、人間関係のバランスで成り立っているのかという事。
いわゆる”大衆”を意識するより”個”を意識する事。まずは一対一のコミニケーションありきだと。
時代とは逆行しているかもしれませんが、コピー&ペーストで物事が便利になり利便性追求の世の中にあって、手間が掛かるアナログ的な気持ちの伝搬を私達は行っていきたいと思っています。そしてそれは非合理的であってもいい。
HITSPAPER: 服の表層だけを見るのではなく、しっかりそのブランドの文脈や憶い感じて欲しいですね。
しかしながら、3.11の震災後に少しづつそのような人間も増えつつあるように思いますが。
Norio Surikabe: 確かにそのように感じます。
HITSPAPER: ファッションはフィジカルとメタフィジカルの関係性、連関性を探求するには非常に有効的だと思うのですが、研壁さんは現在どのように考えられていますか?
Norio Surikabe: 私の場合、衣服単体としての造形美から入っていくのですが、そこに人の存在が入らないと服自体も命を得る事が出来きません。
その為、経験と比例して、ようやく造形の喜びと消費者の喜びがクロス出来るようになってきたように感じます。
そして、モノを制作する時は自分と向き合っていくという内向的なベクトルに進んでいきますが、同時に、自らを俯瞰する部分、その自分との微妙な距離感の取り方は重要になってきています。
前回のコレクションのテーマでも使用していますが、Sense of Distance という概念ですね。
勿論 対人関係でも、接する時と離れる時、そして時代と自分自身、向き合うべき領域と敢えて反目する領域と絶妙な心理的な距離感を意識しています。
HITSPAPER: お話を聞いていると、表面上のデザインや機能の他に非常に多次元に服というものを認識されていると感じられますが、ブランド名にsupport surfaceと命名されたのは何故でしょうか?
一見すると反目するようにも受けとれる名前かと思うのですが、、、
Norio Surikabe: いまでこそ時流が異なりますが、ちょうどブランドを立ち上げる時、アノニマス=無名性が自分的には新鮮に感じられた時代で、ものに対して誰が制作したか解らないという物の透明感という意味でも個人名を冠したブランドは付けたくないと思っていました。
文脈の流れと身体と服の関係性に注目して、身体が服をサポートし、表面として衣服が存在する関係性を support と surface と呼びブランド名にしました。
身体と布の関係をゼロから考察すると、服は確かに表面的なもの(surface)ですが、逆に精神的な意味で心理的なsupportという側面もあります。
例えば服には、着用する事によって、癒されたり、背筋が伸びたり、単純に美しいと感じたりと。心をsupportする役割も同時に存在します。
また、物事の表面上の美しさには、必ず理由があって、多くの人間の努力や、歴史が存在し、断片的に表層だけを真似る事は出来ないと思っています。
私達は、このような表面の美しさの根っこの部分を突き詰めて行きたいと考えています。
HITSPAPER: インタビューありがとうございました。次回のコレクションも楽しみにしています。
Norio Surikabe: こちらこそありがとうございました。コレクション楽しみにしていて下さい。









































