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H220430 / Interview with Satoshi Itasaka

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Ofiicial Site: www.h220430.jp
Interviewer: Arata Sasaki (HITSPAPER)


大量生産、大量消費される社会の中では、情報やモノは溢れ返る。
一過性の流れの中、行き場を失った情報やモノは廃棄される形で、一部はリサイクルへその大部分は地球の片隅にゴミとして集積されてしまう。
しかし、時代はこのようなベクトルとは、相反するように別のベクトルへも集まっている。

『H220430』という少し変わったネーミングのデザインユニットは、板坂諭と右左見拓人がコラボレートし、平成22年4月30日に結成された。
彼らの制作する家具やプロダクトは機能的なデザインでも、マーケティングに則したデザインでもない、きっかけを生むデザインであり、照明や家具などを題材として二次的なコミュニケーションをデザインする。
まさに、社会に時流とは異なるベクトルで活動するユニットである。いま、彼らが見据えるデザインとはどういった事なのであろうか。



Arata ( HITSPAPER ): H220430という名前の由来から教えて下さい。

Satoshi Itasaka: 平成22年4月30日にプロジェクトをスタートした為です。



Arata ( HITSPAPER ): 以前はどのような活動をされていたんですか?

Satoshi Itasaka: 自分の出所には、建築という領域があります。
建築家の私の仕事は、真面目というか堅実なデザインを得意としていますから、家具やプロダクトデザインは相反するようなデザインになっています。
私自身、堅実なデザインとコンテポラリーなデザインが共存している為、少し語弊があるかもしれませんが、建築デザインのフラストレーション、鬱憤がこのプロジェクトの原動力となっていると思います。



Arata ( HITSPAPER ): その鬱憤は、実際の建築の仕事が直線的なベクトルになってしまった為、
それに対する反作用が顕われて来ているように感じました。
それでは、もう一人のメンバーの右左見拓人さんはどのような役割を担っているのですか?

Satoshi Itasaka: 右左見は、大学の同期で建築を専攻しており、CGが得意なクリエーターです。
デザインの工程でプレゼンがとても大事なパートでもありますから、高いクオリティーのCGは必須となります。
連関関係として右左見のプレゼン能力を加えることで、より仕事の質が高い理想に近づくといった相乗効果が現れていると言えますね。

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[ Balloon bench ]
material :GFRP , カラーステンレスワイヤー , レザー size : W 2300 × D 500 × H FREE
contact: gallery SOMEWHERE
http://www.somewheretokyo.com
info@somewheretokyo.com
Photo by Ikunori Yamamoto


Arata ( HITSPAPER ): パンフレットを拝見すると「二次的なコミュニケーションをデザインする」というテーマをお見受けするのですが。。。

Satoshi Itasaka: 一時的なコミュニケーションで帰結してしまうのではなく、その次のコミニケーションがあるという事です。
例えば、『Schwarzwald Stool』という作品は、酸性雨と同じ濃度の酸で錆びさせた椅子ですが、この事実を知った後、「現在、地球環境がどうなっているか?」というようにデザインから次のステップに会話が繋がることを望んでいます。



Arata ( HITSPAPER ): 今まさに、世界ではコンセプトなきプロダクトが氾濫しています。
そういう意味で、建築やプロダクトというところから、次の未来を作っていくメッセージを込めていきたいということですね。

Satoshi Itasaka: はい。
意識はしているけれど日常会話に出すまでもない、避けて通りたい地球環境や社会問題などに対するメッセージを伝えたいと思っています。

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[ EVA chair for kids ]
material :EVA  Size : W 440 × H 800 × D 500 (SH300)
Photo by Ikunori Yamamoto



Arata ( HITSPAPER ):例えば、作品中で、例を出してご紹介して頂けますか?

Satoshi Itasaka: ちょうど目の前にある 『Schwarzwald Stool』をご説明しますね。
この作品は、1960年代に高い濃度の酸性雨が降って、約6割の森が消滅したというドイツのSchwarzwald(シュバルツバルト)という地域から命名しました。
酸性雨に曝された森の木は、そのまま倒れるのではなく、葉っぱを失い、立ったまま枯れていきました。
現在も世界各地で酸性雨は降り続け鉄を錆びさせるように我々を蝕んでいます。
そうしたショッキングな風景をプロダクトに落とし込んで、意識を喚起させようとした作品です。
この作品は大阪の職人さんに鉄板の曲げ加工を施していただき、仕上げ行程は富山の伝統工芸師である折井さんにお願いしました。
折井さんは、加賀前田藩の頃から続いている技術を伝承して、大根の汁を絞って、銅を拭くと良い色になるとか、化学的な薬品を使用せず金属を風合いのある色に変色させる技術を持っています。
因に、この『Schwarzwald Stool>』は二週間、毎日酸をかけて理想的な腐食になるよう調整していただきました。
最終的には表面にウレタンクリア塗装を施しているので、このまま置いていても腐食が進行することはなく、衣類などにサビが付着することもありませんので日常的に使用出来ます。


Arata ( HITSPAPER ): 現在、東京と地方間で、地方産業を殺さないアクションが起っていますよね。こうしたアクションについてどのように捉えられていますか?

Satoshi Itasaka: 現在のモノ造りは、ローコストでとにかく売却出来れば良いという短期的な視点で製造されているものが多いのが現状です。
高い技術を持つ地方の職人さんとお仕事をするとコスト的にどうしてもマッチングが難しいという事もありますが、そのような価値が正当に評価される社会にならなければならないと思っています。

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[ Schwarzwald stool ]
material : スチール 酸による腐食の上ウレタンクリア塗装  size : 300φ × H 420
Limited:12
Contact:gallery SOMEWHERE
http://www.somewheretokyo.com
info@somewheretokyo.com


Arata ( HITSPAPER ): 板坂さんの建築についてもお聞かせ下さい。現在、減築など建造しない事が一つのデザインという概念がありますが、そのことについてどう思われますか?

Satoshi Itasaka: 確かに理想ですね。
このような視点で建築を新しく観察することは、非常に意味がありますし、そのようなスタイルも確かに存在すると思います。
しかし、私の場合は、どちらかというと現実主義的で、クオリティが高いものを設計して、実際にクライアントに体感して貰い評価を戴くことに喜びを感じます。
実直に、記憶に残らないものをデザインして行きたいと思っています。



Arata ( HITSPAPER ): “記憶に残らない”というのは、良いフレーズですね。
このような時代性だからこそ、色々なものが主張しすぎてインパクト勝負で人の興味を惹こうとするデザインが多いように感じます。
それに反目して、”記憶に残らない”という目的はアンチテーゼとして強力な引力を持っていますよね。
とても大きなスケールで物事を捉えていて、デザイン方法論がプッシュ型ではないプル型のデザインなのだと思いました。

Satoshi Itasaka: 建築に携わって12年が経過しましたが、最初は主張するものをデザインに掲げていたのですが、例えば長い時を経ても残っている京都の伝統的なお寺を観察すると、それらは奇を衒うことなく、実直なデザインだったりするんですよね。
伊勢神宮なども表面的には非常に質素でデザインしてないんじゃないかと思われる人もいるのかもしれませんが、しかし、最終的にはそれが残るんだと思えるようになりました。
記憶に残るデザインが施された日光東照宮へ行ったことがある人ならば、誰もが眠り猫などのディテールを忠実に思い出すことができますが、伊勢神宮のディテールを無意識に記憶できている人は
ほとんどいないのではないでしょうか。そのような意味での記憶に残らないデザインが理想だと考えています。

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[ Mushroom lamp ]
material :本体 ― ABS樹脂 /光源 ― LED  size : W 430 × D 430 × H 450
Limited:10(秋頃の発売を予定しています)
Contact:gallery SOMEWHERE
http://www.somewheretokyo.com
info@somewheretokyo.com



Arata ( HITSPAPER ): 3月11日に東北地方太平洋沖地震が起って、様々な事が露になりました。
建物のこと、地域のこと、コミュニティのこと、システムのこと、今までにひた隠して来た問題が、露になったと思うんですよ。
そうした中で、日本がプロダクト、建築というものを通じて新しいフェーズへ、東京だけでは成し得なかった新しい希望となる都市造りが、被災地を中心に進んでいったら、良い未来になるのではないかと思っています。
また、デザイナーがサポート出来ることを具体的に考えてみたり、、、

Satoshi Itasaka: 非常に多くのモノを失いましたが、同時に多くの事を学び得たと思っています。
得たものをいかに長く、また数百年後の震災に向けて活かす事が我々の課題です。
建築の領域では未来の都市創りに貢献したいです。
また、プロダクトはある意味で非常に情報量の多いメディアですから、何らかのカタチで体験していることを、プロダクト作品に落し込みたいという憶いがあります。



Arata ( HITSPAPER ): プロダクトに、メッセージや精神性を込めていくという事をおっしゃっいました。
今回の地震で露になったことの一つに、モノや建築、またはその抽象的な概念に敬意がしっかり払われていなかったのではないかと感じました。
原子力発電所などが典型的な例なのですが、あのような抽象的なエネルギーに対して、危機感がすっぽり抜け落ちてしまっていましたよね。
デザインで憶いを込めるというのは、構造やインターフェィスにもしっかりこうした憶いが現れるような気がするのですが。

Satoshi Itasaka: それが難しいのは、商業主義的なデザインしか生き残らないシステムが出来上がってしまっているからなのだと思います。
倉俣史郎さんのようなスタイルでやり続けることは現代では難しくなって来ました。
どうしても安く早く多く作れるものが勝ち残ってしまうから、結果、原子力だってローコストで多く製造するという発想になってしまいます。
ですから、デザインは線一本一本に責任を持って描く必要があるし、最終的に完成するものに愛情がなければいけないし、さらにはそれを評価できる社会が必要なのだと思います。



Arata ( HITSPAPER ): 『BALLOON BENCH』は、ユーモアや愛情が存分に注ぎ込まれているように感じるのですが、この浮かぶ椅子はどういったキッカケで、制作しようと思ったのでしょうか?

Satoshi Itasaka: きっかけは、フランスの「赤い風船」という映画です。
主人公の男の子がフィナーレで風船に摑まって笑顔で飛ぶシーンが印象的でした。
私達は、作品に触れた人がハッピーになることを理想としています。
そのような理想を思い描いた時、『BALLOON BENCH』に座るだけで、笑顔になってくれたら嬉しいなと思ったわけです。
また、単純に浮かぶという発想だけでは弱いので、高級感のあるソファーで構成されていたらユーモアもプラスされるだろうという事が最終的なアウトプットへと繋がりました。



Arata ( HITSPAPER ): とてもロマンがありますね。板坂さん自身の原点、例えば学生時代はどのような子供だったのでしょうか?

Satoshi Itasaka: 小学生の時に、幸運にも良い先生に巡り会えました。
その先生のクラスでは、黒板の脇にお手製の小さい赤いポストが設置してあり、誰でも毎日、絵を投函したり、作文を投函する事が出来て、最終的には、先生がそれらの材料を集めて保護者向けの日刊新聞を毎日刷っていました。
その新聞には、少し工夫がされていて、表紙の部分にその日に投函されたものの中から、先生が一番良いと思った物を印刷してくれるんですよ。
そのような工夫をすると、小学生は、掲載される為に頑張って投稿する。
現在にして思えば、そんなやる気を引き出すようなシステムが構築されていたんです。
私の場合、絵が非常に好きだったので、絵を投函し続けていくわけですが、その結果、絵で仕事が出来たらなという漠然とした憶いが形成されていったと思います。
ただ、絵は儲からないという事を、小学生ながら吹き込まれていたので、絵描きではなく、絵が仕事の一部であるような建築に興味が向かっていきました。
高校で建築の勉強を始めていくと、フランク・ロイド・ライトとかイームズやバックミンスター・フラー等、領域を越境して活躍する人間を知る事になったわけですが、早い時期に領域を跨がってデザインするという視点に立てた事はとても幸運な事だったと思います。

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[ Ivy chair ]
material : スチール丸鋼16φ 粉体塗装 , ポリエチレン  size : W 630 × D 670 × H 750 SH 330



Arata ( HITSPAPER ):  僕もバックミンスター・フラーがとても好きですよ。
領域をどんどん跨って、横断的に物事を考えられる人がこれから活躍する機会は増加すると思います。
お話を聞いて興味深ったのは、始めから高尚な憶いではなく、絵から入って行きましたよね。
現在の教育は、効率性を重んじるし、打算的で決め打ちのような所が感じられるのですが、例えば、板坂さんのように絵を活かす為に何が出来るだろうという立脚点に立って、そこからスピンアウトしていく道も面白いのではないかと思います。

Satoshi Itasaka: 小学生の時の先生が行ってきた事が実証されていますよね。
事実、小学生の時に決心した事をデザインでやっていますからね。
もしかしたら、あの当時、文章が得意だった人間も現在では、コピーライターを職業としているかもしれませんしね。



Arata ( HITSPAPER ): 教育で言えば専門性を持つ事も大事だと思いますが、もっと横断的に渡れるようなシステムも在るべきだと感じています。

Satoshi Itasaka: 私個人が理想とするのは、スペシャリストよりも、ゼネラリスト的な横の繋がりでアクションを起していく事ですね。
特に建築は総合学だと言われるくらい様々な分野の知識が必要です。
例えば、サインであればグラフィックの性質だし、店舗であればプロモーションにはウェブも必要だったり、様々なジャンルの人間が集まって、漸くひとつもモノができるので、コミニティとして仕事を意識する事になりますよね。



Arata ( HITSPAPER ): こうしたコミニティの考え方が現在の地方と東京といったヒエラルキーに近い関係を崩して欲しいと思います。
業界は異なるけれど、実は、同じベクトルに向いていると東北太平洋沖地震で気が付いた訳ですし、
板坂さんが制作されているようなロマンや大切な哲学が、プロダクトや建築に愛情やメッセージとして浸透していけばこれ以上嬉しい事はないなと感じています。

Satoshi Itasaka: そういう活動を行っていきたいですね。
現在では、まだこのような活動が大手を振って受け入れられる社会ではありませんが、私達は、誰かに頼まれて制作されているわけでもありませんし、自らの意思を貫いて活動をしています。
しかしながら、ウェブやテクノロジーで小さな点が繋ぎ合わさる時代でもありますから、十分ビジネスとしても成立する可能性があると確信しています。



Arata ( HITSPAPER ): このようなスモールトライアルが増えれば良いですね。
バックミンスター・フラーの言葉を借りれば、大きな船を動かすためには、トリムタブが必要ですから、
何か小さなトライアルが、集積して次の時代が動いていくそんな予感を感じさせてくれます。
最後にこれから活動についてビジョンがありましたら、お聞かせ下さい。

Satoshi Itasaka: 次の三本柱の確立を目標としています。
一つ目は、少量生産でのコンセプチュアルな作品の制作。
二つ目は、それに対してある程度の量、生産体制を整えられる作品の制作。
三つ目は、建築でもプロダクトでも、世界に一つだけのオーダーメイド的な作品の制作。
この三本柱は領域にとらわれない活動をしていきたいという考えのあらわれです。
作品には携帯電話など、手のひらに収まるようなプロダクトから、メディアアートのような現実には存在しないものも含まれるかもしれませんし、空間や建築なども対象に含め、幅広い活動を行っていきたいと考えています。
3.11の震災復興もそうなのですが、100年後の未来都市を見据えた都市の創造にも興味を持っています。
こうした活動への憶いが成就したらデザイナーとして幸せを感じると思います。



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