ジャンルという枠を飛び越えて、様々な領域で活動する建築家 谷尻誠。
そのアイデアは、童心に還ったように親しみやすく、ウィットに富み、建築業界以外の分野の人間にも響く力が宿っている。
HITSPAPERを細かくチェックしていれば、建築だけでなく、ディーゼルやミラノサローネでのインスタレーションなどアートの分野でもその力が発揮されているのが解るだろう。
今回は、谷尻氏の独特のアイデア収集法や広義的なデザインの視点、現在に至るまでのプロセスなど話を伺った。
建築は足跡が残り、社会的にもメッセージを残すもの
僕がやりたいのは少しでも多くの人間が建築を知ってもらう事
- 建築家を目指すきっかけになった事を教えて下さい。
Makoto Tanijiri: 実は、建築家に始めは目指してなかったんですよ 笑
初めは、下請けでお仕事出来ればいいかなと思っていたんですが、仕事を受けている内にどんどん提案したくなって来ちゃって、提案はするし、期限も遅くなるし、とにかく下請けに向いてなかったんです 笑
それで、仕事なくなっちゃって、焼き鳥屋でバイトしていた時期もありました。
ただ、その当時は、本当に良く遊んでいて友達だけは多かったんです。
それで、ある人から、お前面白そうだから1つお店デザインして見ないかと誘われて、仕事をもらい、そこからまた仕事が増えるようになりましたね。
当然、お店のデザインをした事はなかったんですが、建物に向き合った事で色々勉強をしたし、
向き合い方や意思の方が大切なのだと解りましたね。
- 昔から、物事に向き合うという事が習慣だったんですか?
Makoto Tanijiri: いえ、小さい頃は、引っ込み思案なタイプだったんです。
当時、バスケットボールをやっていて、一応はレギュラーなんですが試合になると
凄く緊張してしまってボールもらったら、ミスするのが怖いからすぐリターンパスを出すみたいな 笑
そんな感じだったのですが、高校に入って、ちょうど2年生がいないチームだったので、
1年経過すると引っ張っていく世代となり、その中でキャプテンになりました。
そこからですね。自分が責任を持って物事を進めていくようになったのは。
才能の有無じゃなくて、努力をする事である一定のレベルまで行く事がバスケットを通じて学びました。
- その経験は、仕事をする上で活きていると思いますか?
Makoto Tanijiri: はい。責任感という事でいえば、建築は足跡が残っていくじゃないですか。
それは、社会的にもメッセージを残し続ける事なので、少しでも多くの人間が建築の造詣が深くなったり、若い子が建築家を目指したりすれば良いかなと少しずつ考えるようになりました。
そういう意味では、スポーツが僕の性格を変えたといっても良いぐらいですね。
- 学生の頃、よく遊んでいたようですが、今考えるとこの時間はどのように現在に作用していますか?
Makoto Tanijiri: コミニケーションする能力ですね。僕、人好きなんですよ。
コミニケーションの大切さは、その当時に培われた事だと思いますね。
- アート・インスタレーションについて教えて下さい。きっかけはどんな事からスタートしたのでしょうか?
Makoto Tanijiri: 最初はデザインタイドからですかね。
ポイントポイントで僕をピックアップしてくれる人が居たから、こういったインスタレーションを作っているのだと思います。
デザインタイドのような展示会は普通は、パーテションで区切っていくものになると思うのですが、会場全体が作品という概念で作ってくれと要望があって、
そういった概念の元デザインさせてもらいました。
短期勝負なので、文化祭のように、短期間で集中して非常に楽しく設計を、させてもらいました。
もっとフラットにもっと解りやすいプラットフォームへ
そこから新しい価値観が生まれて来る
- アート・インスタレーションと建築はどのような関係性があると思いますか?
Makoto Tanijiri: 僕の中で、建築とアートという隔ては言葉ではあっても、実際はあまりないんですね。
考え方を設計するという事なので、それが建築でもアートでもプロダクトでも一緒なんです。
思考をデザインするというか、仕事としては僕の脳みそに期待して欲しいといつも思っています。
- 先ほど、初め建築家を目指していなかったとおっしゃいましたが、現時点ではどのように考えていますか?
Makoto Tanijiri: そうですね。。。建築家であろうとしているかもしれません。
若い子達が建築家になるという夢を持たない状態では、社会は良くならないと思います。
色んな価値観で、モノがつくられていけば良いと思いますし、僕が出来るのであれば、皆でも出来るよって伝えたいと思っています。
それと、今までの建築像ではない新しい像というか、もっとフラットで建築家だろうとそうでない人だろうと、いいモノはいいよねって言い合える言語としても解りやすいプラットフォームが必要だとも思いますね。
- 非常に共感します。僕らも融解をキーワードにしています。
それぞれの業界の良い考え方をミックスしたり、ロールモデルをインテグレートしたりする事で、
新しいクリエイティブ・クラスが生まれて欲しいと考えています。
Makoto Tanijiri: そうなると最高ですね。
新しい価値観が生まれて来るというのが、デザインなんだと思います。
社会的にはモノを作ったりする事がデザインだとされていますが、それを結び付けていく事も十分デザインと言えますし、もしかしたら、何もしない事もデザインかもしれません。
価値観が多様になって行くことは本当に良い事だと思います。
残念ながら僕は建築家の友人が少なくて 笑
なので、建築のプレゼンテーションを違う業界の人に聞いてもらっているんです。
理解してもらえるか、共感してもらえるか、これは僕にとってもとても大事な事なんです。
これは僕の知人の言葉なのですが、「華麗なる素人が良い。」とよく言うんですね。
建築家が建築家としての言葉を持つよりも、
本当に多くの人に伝わるような言葉を持っていった方が良いと考えています。
それによって多くの人に元気を届けられると思うんですよ。こういう考え方があるんだって。
- エスペラント語に似てますね。その概念は。
そういった言語や考え方が次の時代には必要なのかもしれませんね。
Makoto Tanijiri: ついつい括る価値観ってあるじゃないですか?
例えばテーブルは家具じゃないですか。建物は建築ですよね。
テーブルが何倍かの大きさになったら、それはまだテーブルなのか、建築になっているのか。
モノの価値観は白か黒というような、そんな単純な事じゃないと思うんですね。
意識が働き始めたところから変わっていくんじゃないかと。。。
日常の中で、違った見方でモノや人を見る事が出来るようになれば、
デザインをする上で圧倒的なスタート地点に立っているんだと思う
- 谷尻さんの言葉で、「拾い集める」というキーワードが印象的です。
この言葉はずっと以前から意識していた事なんでしょうか?
Makoto Tanijiri: 僕らがやっている事って発明ではないじゃないですか。
やっぱり発見だと思うんですよ。
そう考えると、発見は拾うという事と同義だなと思います。
日常の中で、違った見方でモノや人を見る事が出来るようになれば、
デザインをする上で圧倒的なスタート地点に立っているんだと思います。
- アイデアは建築以外から拾う事が多いですか?
Makoto Tanijiri: そうですね。僕はよく「名前を無くす」という事を言っているんですが、
椅子って言葉で表現すると、誰もが似たような形状のものを思い浮かべると思います。
例えば、椅子という名前を取り上げて、座るものを想像して下さいといったら、
もっと良い形の椅子の形状が生まれるかもしれません。
「名前を無くす」というのは、スタートとしてはとても良いもので、
これから名前が付くようなものになったらいいじゃないかと思います。
- それは非常に哲学的ですね。
例えば、自分の名前を無くすという事は、IDを無くすって事で、自分が一体何ものなんだっていう問いかけが始まりますね。
Makoto Tanijiri: 僕は、哲学は難しくて解らないのですが、哲学が大好きなんです 笑
子供の頃、自由な発想で考えていましたが、下らない発想かもしれないけど、実は非常に哲学的な事かもしれない。
だから、発想は子供、実制作は経験を生かした大人そんなスタイルで、誰よりも不真面目に考えて、誰よりも真面目に作りたいですね。
- 秘訣は何ですか?
Makoto Tanijiri: 遊ぶ事ですね。毎日遊んでます。
人に会って、パワーをもらってますしね。
そして、出来る限り妄想もしています。
年齢を重ねると、経験という様々なカードが手に入ると思うんですよ、そうなるとわざわざ新しいカードを手に入れたくならないし、クリエイティビティとしてはまずい状態だと思うんですね。
やはり、やりたい事がイニシアチブをとるべきだと思います。
それには妄想する力が必要不可欠だと思います。
- 拾っていらないものを、捨てる(削る)作業をどのように考えていますか?
Makoto Tanijiri: 凄く面白いアイデアがあるとするじゃないですか。
これをいざデザインに落とし込む時、純度が落ちますよね。これって、まだまだ贅肉がある状態だと思うんですよ。
完成された作品は、ここに行くまでの純度が圧倒的に高くないといけないので、その振れ幅を少なくするには、この贅肉をいかに削るかという事が大事だと思います。
- 長いインタビューありがとうございました。
Makoto Tanijiri: こちらこそありがとうございました。
—
谷尻誠 (SUPPOSE DESIGN OFFICE 代表/建築家)
1974年 広島生まれ
2000年 建築設計事務所Suppose design office 設立
住宅、商業空間、会場構成、ランドスケープ、プロダクト、アートのインスタレーションなど、仕事の範囲は多岐にわたる。
広島・東京の2ヵ所を拠点とし、国内外合わせ現在多数のプロジェクトが進行中。
現在、穴吹デザイン専門学校 特任講師
【主な仕事】
DESIGNTIDE TOKYO2008 会場構成
DESIGNTIDE TOKYO2009 会場構成
Milan Salone 2010 東芝Luceste インスタレーション
その他、これまで手がけた住宅は80件を超える。
【受賞】
2009 平和大橋歩道橋設計国際競技ファイナリスト
2009 Modern Decoration International Media Prize Annual Commercial Award(上海)
2009 AR Award / commendation (London)
2009 INAXデザインコンテスト銀賞受賞
2010 UPTO35 ギリシャ国際設計競技ファイナリスト
2010 愛知まちなみ建築賞
2010 住まいの環境デザインアワード W受賞
2010 THE INTERNATIONAL ARCHITECTURE AWARD(Chicago)
など、その他、国内外多数の賞を受賞。
年内には、初の著書も理論社より出版予定。
サポーズデザインオフィス
http://www.suppose.jp
—









































