人とクルマと世の中のつながりを豊かにしていく「インターナビ」
本田技研工業株式会社が、「人とクルマと世の中のつながりを豊かにしていく」というコンセプトを掲げた新しいインターナビ事業室のプロジェクト『dots by internavi』(design our transportation story = dots)を開始した。
『dots by internavi』では、ホンダのカーナビゲーションシステム、インターナビを通じて獲得した通行情報や気象・防災情報などを、SNS活用によって広く一般の人にも役立つ情報として配信される。
通常こうしたサービスは会員向けのクローズドされたコミュニティに配信されるのだが、コンセプト通り、ソーシャルメディアとの連動を始め、広く世の中とつながる関わり合いを提案している。
また、インターナビ会員の車両から収集した走行実績データを活用した通行実績情報の提供が震災復興支援として評価され、2011年度のグッドデザイン大賞を受賞するという快挙も成し遂げている。
今回の HITSPAPER特集では、社会と人とクルマとの新しい接続と未来を探求する為、本田技研工業株式会社のインターナビ事業室の室長 今井武氏、主任 三河昭広氏、株式会社 電通のクリエーティブ・テクノロジスト 菅野薫氏、米澤香子氏、アートディレクター 大来優氏、METAPHORの金原祟人氏、増田一太郎氏、関洋輔氏に、プロジェクトへのおもいや制作過程について話をうかがった。
ホンダのDNAを継承したプロジェクト
『dots by internavi』
- いつ頃からこのようなテーマで、取り組みを始めたのでしょうか?
Kaoru Sugano (dentsu): 2月頃です。
最初は、お互いの領域を理解するという事からスタートしました。
私は電通の中でも、比較的新しいクリエーティブ・テクノロジストという役割ですので、翻訳役のような形でインターナビの状況を御聞きするという段階からご一緒させて頂きました。
今回のプロジェクトは、通常の広告と異なり、広告的な発注・受注という形態ではなく、一緒に提案を考察していく完全なるコラボレーション形態を採っています。
何故なら、インターナビは有機的に連動したコミュニケーションを目指しておりましたから、このようなコラボレーション形態が制作過程において適切に機能すると考えたからです。
その為、その為、チームは各々の得意分野と様々な状況に対応可能な柔軟性を持つ、非常に若いメンバーで構成されています。
- インターナビへどのような思いが込められているのでしょうか?
Takeshi Imai (Honda): インターナビは、モビリティの世界の中で、いかに渋滞を無くし、災害を無くし、CO2を削減していくかというテーマで、社会のよりよい向上を目指してきましたが、
今回の『dots』は、このようなインターナビの取り組みの集大成であると言えます。
Akihiro Mikawa (Honda): この一つの集大成である『dots』に至るまで、長い間、開発・研究を行ってきた訳ですが、このインターナビを第三者に説明するのは、過去の経験で非常に困難なことが解っていました。
クルマは、どちらかと言えば訴求しやすいのですが、インターナビの訴求は難しい。
10分程説明して、ようやく納得してもらえるくらいなので、そもそものコミュニケーション方法がボトルネックでした。
その為、理解し易いようにインフォグラフィックスで可視化し、コミュニケーションを円滑なものにしたいという思いが『dots』には込められています。

- インターナビのサービスは、かつて、クローズドされた会員向けのサービスとして提供されていましたが、今回はソーシャルメディアと連動したオープンなサービスになると御聞きしましたが?
Takeshi Imai (Honda): 今年、すべてのHonda車オーナーがスマホなどで使えるインターナビ・リンクのサービスを開始しました。ドライブがもっと楽しく、快適になり、カーライフそのものが豊かになるサービスを提供することがコンセプトです。
その中で、世の中とオープンにつながることで、社会の役に立つ取り組みも行っています。
この思いを強固にしたのは、3.11の震災で、例えば、地震や津波のような危機的状況をシェアする事によって、より社会に貢献出来ると考えました。
そして、シェアをするのであれば、私達だけのクローズドされたコミュニティではなく、多くの方が利用されているTwitterやFacebookのAPIを使った形態でシェアしたいと考えました。
これらの思考の根底には、私達のオヤジさん 本田宗一郎が語り続けて来た「世の中の役に立ちながら、面白い事をする」というDNAが受け継がれています。
※Hondaでは創業者の本田宗一郎を「オヤジ」と呼んでいる。
互いの専門分野を活かす
フラットで流動性のあるチームづくりが成功の鍵
- 素晴らしいスピードとチームワークで今回のサービスが完成したそうですが、
企画・制作過程に於いても新しい形態での取り組みとなったのではないでしょうか?
Akihiro Mikawa (Honda): 強固なチームワークが成功の大きな要因だと思います。
フラットに隠さず、互いに尊重し合って、信頼関係を築いて来たという事が非常に大きいのではないでしょうか。
Kaoru Sugano (dentsu): 制作工程に於いても、通常の広告提案ですと、プレゼンテーション後、クライアントが実施するかの判断を下しますが、今回のプロジェクトに関しては、クライアントであるホンダさん含めて、その場でディスカッションするような形で、企画から一緒に考察していくといったプロセスを経ました。
Takeshi Imai (Honda): 私が考えるに、本来のモノ・サービス作りは、クライアントだけの尺度で判断するのではなく、双方の観点によって創り上げていくべきだと思います。
これは、お客さんに対する姿勢と同様で、技術屋が屁理屈を言うのではなく、本当にお客さんが求めているもの実現していかなければいけません。
Kaoru Sugano (dentsu): こうした観点が活きる環境を創る為、
通常は、営業からある種伝言ゲームのような形で企画、デザインに落とし込む工程を、
今回に限っては、打ち合わせは基本全員参加、そして、根幹を全員でシェアしました。
その為、技術的に難解な話でも、デザイナーまでが基礎を理解出来ているという環境を創る事が出来ました。
クライアントとの距離感がすべてのパートに対して、フラットに近い環境を生み出せた事が成功の鍵なのではないでしょうか。
- こうした形態が今後、新しいサービスを生み出すインフラになるでしょうか?
Kaoru Sugano (dentsu): 一瞬で流れてしまうような一過性の強いプロジェクトではなく、大きなスキームで組み立てて、各々の得意分野を持ち寄って、フラットに企画・制作していくような制作方法論でなければいけない時代に差し掛かっているのではないでしょうか。
- デザイナーやテクノロジストという役割でこのチームに携わってそれぞれどのような感想をお持ちですか?
Kyoko Yonezawa (dentsu): 私は、テクノロジストとしてこのプロジェクトに携わっていましたが、エンジニアリングの仕組みを世の中全般に伝える事は、以前から興味を抱いていました。
通常の広告ですと、エンジニアが表に出ることは希少ですが、
『dots』プロジェクトのようなデータの可視化によって、
裏側で懸命に仕組みを制作しているエンジニアさん達のおもいが少しでも伝われば嬉しいです。
Yu Orai (dentsu): 私は、アートディレクター/デザイナーとして参加させてもらいました。
デザイナーとして、難しいエンジニアリングを理解するのは困難でしたが、
伝えるべき根幹が明快でしたので、どのようにインフォグラフィックスに落とし込めば一般の方に伝わるか、その役割に徹する事が出来ました。
『dots now』に関しては、一般の方への間口の広さを考慮して、感情面からデータを捉える事を意識しました。
その為、テキストで詳細を記述するのではなく、個々のビジュアライズによってメッセージを込めるというテーマでデザインに落とし込んでいます。
METAPHOR: 私達は、『dots now』のプログラマーとして携わっています。
以前は、ニューロン・ロードというデータの可視化を試みましたが、
今回は、リアルタイム同期に加えてビジュアルのブラッシュアップ、そしてソーシャル連動という進化が目標となっていたので、
私達自身にとっても大きな挑戦となりました。
- リアルタイムに反映されていますが、仕組み的にはどのようになっているのですか?
METAPHOR: インターナビが集積する走行データ、防災・気象データを加工してAPI化して、インフォグラフィックスに落とし込んでいますが、
これらがリアルタイムに稼働するように、サーバーデータのアップデートを定期的に取得するようにしています。
その為、例えば、昼と夜、平日と休日でそのビジュアライズは全く異なります。
Kaoru Sugano(dentsu): このリアルタイム同期ですが、リアルな世界の情報なので、実際のビジュアライズが美しく落とし込まれるのか不安でした。
夜はクルマが走っていないかもしれませんし、いざ蓋を開けてみないと解らないという状況でしたが、
結果的に美しくビジュアライズ化されて安堵しています。
Kyoko Yonezawa (dentsu): このリアルタイム同期で非常に面白いのは、インターナビによって日本でのクルマや人の流動性が、いまこの瞬間に感じる事が可能であり、その壮大さに面白みを持っていただければ嬉しいです。
- インタラクティブな表現で難しいところはありましたか?
METAPHOR: テクニカルな側面より、ビジュアライズの手法が困難でした。
例えば、デザイナーである大来さんの一枚の絵から、25秒のインタラクションをどのような過程で紡ぎ出していくかといった落とし込みの部分です。
渋滞のビジュアライズは情報量が膨大だった事もあり、困難でした。
Kaoru Sugano(dentsu): 渋滞に関しては、渋滞予測まで行う為、過去のデータを抽出して解析する必要があります。
右上のパイチャートは、普段の混雑具合との関係を可愛らしく可視化を行っていますが、裏側では大変な計算式が働いています。
今回は、裸とも言える生データの集積や思考回路が『dots now』のモニターではっきり可視化されているので、かつては、半信半疑であったルート紹介など、リアルタイムで情報共有する事によって、信憑性を持ってユーザーの皆さんが認識してくれるのではと思っています。
“いつもつながる、そして、みんなとつながる”
- 最後に、これからのインターナビの責任、未来をどのようにお考えですか?
Takeshi Imai(Honda): 私達が目指すのは、渋滞を無くし、CO2を削減し、安全に楽しくクルマで走行出来るインフラ作りです。
その為に、「いつもつながる、そして、みんなとつながる」という環境を作らなければいけないと考えています。
その目標を達成するには、私達だけでなく国やお客さんと一緒に作っていかなければいけません。
例えば、公共の信号機の制御や震災への対応は、行政や大学と協業する必要性があり、
このような組み合わせを模索すると同時に、小さなチームでも可能な事はスピードを上げてやっていく必要があります。
私達の当面の目標は、ホンダのクルマを全てつなげる事ですが、緊急の際には、最もソーシャルな場のAPIを使用して、社会に広く接続して行きたいと考えています。
左から三河昭広氏(本田技研工業株式会社)、大来優氏(株式会社 電通)、菅野薫氏(株式会社 電通)、米澤香子氏(株式会社 電通)、今井武氏(本田技研工業株式会社)。
左から菅野薫氏(株式会社 電通)、米澤香子氏(株式会社 電通)、大来優氏(株式会社 電通)、金原祟人氏(METAPHOR)、増田一太郎氏(METAPHOR)、関洋輔氏(METAPHOR)。
—
Honda | dots by internavi
「dots」とは、「design our transportation story」の略で、Hondaのインターナビ・システムを通じて収集した情報と、リアルタイムに発信される社会のさまざまな情報を組み合わせることで、「より快適に、環境に優しく、安全な道のりをデザインする情報を提供したい」「もっと人とクルマと世の中のつながりを豊かにできないか」という2つの想いを具現化するためのプロジェクト。
Hondaが独自で展開している双方向通信情報サービス「インターナビ」を通じて得られたユーザーの通行情報や、交通情報、気象・防災情報などを「インターナビ・リンク」会員へのサービスにとどめるのではなく、ソーシャルネットワークを活用することで、多くの方々にも役立つ情報を幅広く提供する。
ソーシャルサービスの第一弾では、ドライブ中の情報をリアルタイムに友達と共有できる「インターナビ・ルート共有機能」や、インターナビ利用者でなくてもWebサイト上で作成したドライブ計画をFacebookを通じて共有できる「旅の計画共有サービス」、目的地や案内ルート付近のさまざまなリアルタイム情報をシェアできる「インターナビ情報ソーシャルマップ」など、ドライブを楽しく、快適にするサービスを提供する。また、「燃費ランキング」や「燃費履歴」といった情報をFacebookやTwitter※3などのソーシャルメディア・プラットホームと連携させることで、さらに多くの方々に役立つサービスの提供を順次拡大予定。
—
Staff Credit
dots by internavi
Project Director : 今井武 / 今村健(本田技研工業)
Communication Supervisor : 三河昭広(本田技研工業)
System Architecture Designer : 石藤雄一郎 / 野川忠文 / 菅原愛子(本田技研工業)
Creative Director, Creative Technologist : 菅野薫(電通)
Copy Writer : 保持壮太郎 / キリーロバ・ナージャ(電通)
Art Director : 大来優(電通)
Creative Technologist : 米澤香子(電通)
Account Executive : 鏑木崇雄 / 佐藤巧磨 (電通)
dots vision 「色めき出す世界」
Director : 中根さや香(ELECROTNIK)
Producer : 多田真穂 / 藤岡将史(電通クリエーティブX)
Production Manager : 安田知可(電通クリエーティブX)
Music : HIFANA
撮影 : 正田正弘
撮影チーフ : 宮崎勝之
照明 : 竹本卓司
照明チーフ : 島野朝司郎
美術 : 鴇田清美 / 名嘉眞秀(SUI)
手芸・刺繍 : 白石さちこ
アニメーター : 豊村かおり
デザイナー : 福田竜也
モーショングラフィック : 山﨑大祐
CGプロデューサー : 浅原秀一郎(ガレージフィルム)
CGディレクター : 堤義幸(ガレージフィルム)
オフラインエディター : 田中一成 / 高橋文義 / 上條孝之
オンラインエディター : 小森









































