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色彩論から考えるニューエイジ・デザイナー




ニュートン vs ゲーテ 対立項その両極に作用し合う「くもり」のレイヤー

ある一つのテーマを浮かび上がらせる時、僕らは対立項を引き合いに出して、そのテーマを掘り下げる手法を使います。 企画やデザインに於いてこうした手法は、知らずの内に起こしているビヘイビアだと言えます。

さて、その二元論は、例えば生死、善悪、男女など様々な対立項を思い浮かべる事が容易に出来ると思います。 勧善懲悪としてそれは宗教的、そして政治的なプロガバンダとして利用され、構造的には誤謬を産み出しやすくなっているのも事実ですが。

さて、ここでデザイナー的観点でとても面白いネタを東京大学の神経科学研究者の飯島さんに教わりました。 それは、デザイナーにとって大切な色彩について。 その昔、ニュートンとゲーテが色彩論で論争をしており、その立証方法・捉え方が非常に面白いのです。

簡易に説明するとニュートンはプリズムの実験から得た色彩論は物質的側面の解釈であったのに対して、ゲーテは感覚的、精神的な作用について言及していて、「色彩を私達がどのように感じ、精神的作用を受けるか」という心理学的側面の解釈を持ち出しています。 ここで面白いのは、色の知覚に光と闇そしてその中間層によって色彩が成立するというゲーテの論述で、光に対して、闇という対立項を持ち出し、その両極に作用し合う「くもり」のレイヤー層の存在によって初めて、僕らが色彩が知覚出来るという事です。 ゲーテは色彩をより有機的に生き物のように蠢くものとして捉えたのですね。

さて、少し話はスピンアウトしますが、これは色彩に限らず、経済学でもこうした研究が進行しているようですね。 例えば、資本主義では会社が存在する理由として、利益を最大化するというビヘイビアが正当でありますが、これは物質的な側面しか捉えておらず、ゲーテ的な概 念で捉えるならば、どのように感じ、精神的作用によってどう行動するかというドライバーについて言及される必要があります。 ゲーテが次世代の未来を憂いてニュートンの光学を執拗に反証したという事実は、実は現代社会に置いて非常に意義がある事だと感じます。 ゲーテが光と闇の対立項の間にある「くもり」を重要なレイヤー層として挙げたのは、未来のメッセージであり、事実、現状の世界を写しているのではないでしょうか。

では、この「くもり」を現代社会的解釈をすると、どういったものになるでしょう?




グラデーション化した世界 グラデーションを横断するデザイナー

現在の世界を見渡すと嘗てのような大きな対立軸を抽出するのは難しように感じます。 古 くは、グノーシス主義や宗教でも善悪の神が必ず存在するし、近年で挙げるのであれば、大きな対立項は第二次世界大戦後の世界を二分した冷戦、資本主義・自 由主義と共産主義・社会主義の対立構造が挙げられますが、現在はよりフラット化し、小さな対立軸を集積したグラデーション化した世界へと移り変わっていま す。

しかし、そうした世界でも、パレスチナやアフリカ諸国など未だに植民地時代に端を発した紛争が後を絶つ事はないし、先進国や発展途上 国の温度差も埋まらず環境問題も人類が抱える大きな問題で、混沌とした時代には変わりないだろうと感じます。何が正しい道なのか、成長しているのか、停滞 しているのかすら判明しません。 ではグラデーション化された世界ではどのような事を指針として、私達は進んでいけば良いでしょうか。 個人的な見解では、演繹法や帰納法といった推論ではなくアブダクティブな推論が必要なのだと思います。問題となっている事柄への解答の仮説を推論して、少しづつ集積していくという方法です。

デザイナーにとって、こうしたグラデーションの上を、二つの項、一方はニュートンのような物質的側面の解釈、一方はゲーテのような感覚的側面の解釈を常に何度も行き来する存在だと思います。理論と感覚を兼ね備えた存在ですね。 このグラデーションを行き来するという事は、実に珍しいポジションに居るように思うし、未来のクリエーターが成すべき創造はこの対立項をメルトダウンさせ、時には個人間、組織間の対話プロトコルとなり、美しいグラデーションを描く事のように思います。 これは政治的ガバナンス構造や、経営構造、業態構造、組織構造といった広義的なデザインまで含む考え方です。

デザイナーがこのグラデーション化した世界で貢献出来る事は、非常に大きいと思うし、その故に、あらゆる業態とコラボレーションをし、また業態間を繋ぎ合わせ、ファシリテーション的な編集までこなすマルチプルなデザイナーの出現が求められています。

HITSPAPERの次の3年の大きな目標は、業界内、業界間をメルトダウンさせ、こうした新しい考え方を持つクリエーター、クリエイティブ・クラスを産み出し、サポートしていく事になるでしょう。

 

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