日 本文化に多大な影響を受けたという台湾出身のエリック・チェンは、母国でファインアートとパッケージ・デザインを、NYでグラフィック・デザインと広告を 学んだ後、26歳という若さでデザイン・スタジオを設立した。そして、その5年後には、自らのチームを率いて台湾を代表するゲームメーカー、 Gamania Digital Entertainment(通称:ガマニア)内にGamania Brand Centerを設立。現在はガマニアを魅力的な企業へと導きながら、台湾の若いクリエイター達の為のプラットフォーム作りに励んでいる。アジアの状況が大 きく変わろうとしている今、小さな島国・台湾では一体何が起こっているのだろう。マーケティングとデザインのプロフェッショナルであるエリック氏に、ガマ ニアや現在の台湾についてのお話を伺った。
- まずはガマニアについて教えてください。
Eric Chen:ガマニアは、1995年に4人の若者によって設立され、現在はアジアを中心に展開しているオンラインゲーム会社です。本部は台湾で、香港、中 国、韓国、日本、欧米にも各法人があります。設立当初は「Fullsoft」という社名でパッケージゲームを販売していたのですが、大量の海賊版が出回っ たことをきっかけに低価格化に踏み切り、その後、創始者のアルバート・リー(Albert Liu)がこれらのゲームのオンライン化のチャンスを見つけたことから現在のようなオンラインゲーム会社となりました。
- エリックさんはどのような経緯でガマニアに入社されたのでしょうか?
Eric Chen:私は留学先のNYから98年に帰国し、すぐに自分のデザイン・スタジオを設立しました。ガマニアは99年から03年まで私達がコンサルタンティ ングを担当していたクライアントだったのです。当時の台湾では、純粋なゲーム制作会社は経営不振によりあっという間に閉鎖してしまう状況で、多くは別業務 をこなしながら、なんとか生き残ろうとしていました。しかし、当時のガマニアに在籍していた人達はゲーム制作に対して強い情熱を持っていたのです。そこ で、私達は99年に「ゲーム・マニア(Game Mania)」に由来する「ガマニア(Gamania)」という名前を元に新たなアイデンティティを提案しました。そして、ガマニアは2001年にはその ビジネスを軌道に乗せ、会社としての規模が拡大していた2003年に大きなグループを統括するための本部を設立することになったのです。その頃に私もガマ ニアのブランディングに本腰を入れるため正式に参加し、自分のデザイン・スタジオをガマニアのブランド・センターとして再スタートを切りました。
- ブランド・センターではガマニアのブランディングのみを担当されているのですか?
Eric Chen:ガマニアと関連会社を担当しています。とは言え、関連会社だけでも30社ほどあるので、私の一日のスケジュールは、クリエイティブ・ワーク ショップの開催、ビデオの撮影、2011年版の会社案内の制作などでぎっしり埋まっているんですよ。私はいつも左脳では企業のマーケティング戦略やアイデ ンティティのマネージメントを考え、右脳ではクリエイティブ・リサーチを常に行い、書籍の発行からイベントや展示の開催などを行っています。
- イベントや展示の開催もガマニアのブランディングの一部なのですか?
Eric Chen:ブランド・センターの主な目的は素晴らしい文化を外から持ち込んで、ガマニアというブランドを魅力的に見せることです。ガマニアはゲーム会社で すから、中にいる私達は誰よりも遊び、人々に刺激を与えられるような楽しいアイディアを常に持っていなければなりません。ですので、クリエイティブなイベ ントだけでなく、アニメーターやプロデューサーを招いたメディア寄りのカンファレンスなども開催し、社内報の発行も行っています。要は、ゲーム業界の中に あるクリエイティブ・エージェンシーですね。
- 遊びを通してクリエイティビティに触れ、それをビジネスに落とし込むというのは、とても理想的な方法ですね。それでは、台湾の文化について少し教えて頂けますか?
Eric Chen:まず、台湾文化は、世界中の中華街に影響を与えています。中華街というのは、中国だけでなく香港、マカオ、NY、横浜などの世界中の中華街にい る中国人全体という意味です。台湾のメディアは非常にパワフルで、台湾で起こっている出来事の多くは、テレビや雑誌などのメディアから発信され、世界各国 の中華街へと広がっていくのです。
- その文化は台湾独自のものなのでしょうか?
Eric Chen:少し前までの台湾は、個性的な日本文化に多大な影響を受けていたと思いますが、現在は中華圏においてオリジナリティではより豊かな環境にありま す。例えば、クリエイターの数も多いですし、印刷技術も進んでいます。それは、過去100年間の間に台湾が日本だけでなく、アメリカ、中国など様々な文化 に影響を受けてきたから起こったことです。
- 台湾は小さな島国であるため、これまでの歴史で常に様々な国からの侵略に脅かされ、それが逆に外の文化を柔軟に取り入れる要因となったと聞いたことがありますが、まさにそういうことでしょうか?
Eric Chen:そうですね。生き延びるためにはそうするしかなかったのです。台湾はこれまで「世界の工場」の役割を果たしていました。その中でも特に有名なの が玩具で、裏に「Made in Taiwan」と記されたものをご覧になったことがありませんか?台湾にはオリジナル・ブランドがなく、主にアメリカに向けたプロダクトを生産していまし た。しかし、それすらも今や中国にシフトしてしまった。私達は自分達の持つものをアップグレードさせなければいけない時期に来たのです。台湾人は既存のも のを打ち破ることを恐れません。日本で言うなら、二つのものを掛け合わせてカレーうどんを誕生させた名古屋に似ているかもしれませんね。台湾名物のバブル ティー(タピオカ入りミルクティー)も、西洋のカクテルと中国人のお茶好きのアイディアを融合して生まれたものなんですよ。
- 他にも何か文化的な特徴はありますか?
台 湾にはシンガポールやマレーシア出身の中国系の歌手が大勢います。彼らは、母国の音楽市場が小さい為、巨大市場を目指して、メディアにおいてパワーのある 台湾からデビューするのです。先程お話ししたように、台湾での成功は中華圏全体での成功に繋がります。台湾で放送されている情報番組の数は多くはないので すが、逆にそのお陰でどの層で何が流行しているのかも簡単に見つけることができます。そして、それらの人気情報番組は、インターネットにアップされ広がっ ていくのです。そのような番組では、あのセレブがどのレストランに行った、というようなゴシップ情報も紹介していますから、それを見ている人達は例え台湾 に来たことがなくても、台湾一のレストランを知っているんです。
- では、今現在、台湾で人気があるものは何でしょうか?
Eric Chen:一般的には屋台料理がすごく人気で、新しい料理がどんどん出て来ています。若者の間では、韓国のドラマやK-popが人気です。ほかに、台湾出 身の周杰倫(ジェイ・チョウ)というファッションリーダー的な存在の男性がいます。彼は歌手、プロデューサー、映画監督という様々な顔を持ち、あらゆる ジャンルのリーダー的な存在であるため、「周会長」とも呼ばれているんですよ。彼の音楽はR&Bなのですが、歌詞はとても伝統的な中国の文学を思 わせるもので、つまり、ここでも台湾のミックス・カルチャーが象徴されています。
- では、最後にエリックさんの将来の目標と台北のおすすめスポットをひとつ教えてください。
Eric Chen:私は現在38歳で、アニメーションやゲームをはじめとする日本文化に多大な影響を受けた世代です。おそらく、それは台湾だけでなく、アジアの多 くの国の同世代の人がそうだと思います。しかし、過去10年の間で、台湾、香港、韓国などは裕福になり、自らのアイデンティティを模索するようになりまし た。その手段のひとつとして、オリジナルのものを作ることを始めたのです。その顕著な例が韓国で、近年、車産業やクリエイティブ産業に力を入れていますよ ね。そして、その波は今アジア中に広がり始め、購買力が移り始めたアジアについに欧米も注目し始めました。台湾では、オリジナルなものを作りたいという想 いが、若いクリエイターを中心に益々強くなっています。私には多くの経験がありますから、若いクリエイター達にインスピレーションを与えたい。何かを作る というよりも、そのプラットフォーム作りに興味があるんです。これまで、中華圏出身のデザイナーが世界で注目されることはそうありませんでしたから、これ は私達にとっても素晴らしいチャンスだと思います。ガマニアは、オリジナルのキャラクター、ゲームだけでなく、アニメーションやプロダクトなども自社で制 作しています。私達は、これらのプラットフォームを通して、才能ある若いクリエイター達をどんどん世界に送り出すお手伝いをしていきたいと思っています。
台 北のおすすめスポットは、松山空港近くの民生社區というエリアにある「wooloomooloo cafe」(台北市富錦街95號)です。この辺りは公園も多く、”都会の中のオアシス”という雰囲気があり、このカフェではアーティストを多く見かけま す。美味しいコーヒー、たくさんのデザイン誌、心地よいスペース、インターネット…頭を休めるにも、仕事のことを考えるにも、最高の場所なんですよ。
Gamania Digital Entertainmentのロゴ。
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Eric, Pingliang Chen(エリック・チェン/陳 秉良)
1972 年台湾台北市生まれ。台北市の私立復興高級商工職業学校(Fu Hsing Trade & Arts School)でファインアートとパッケージデザインを学んだ後、NYのParsons School of Designでグラフィック・デザインと広告を専攻し、1997年に卒業。翌年、台湾でECDデザイン・スタジオを設立し、ブランディングで活躍。その哲 学は、文化と人間性の研究を重要視するもので、ちょっとしたユーモアも含まれている。2003年、エリックは自らのチームを率いてガマニア・デジタル・エ ンターテイメント・グループにて、ガマニア・ブランド・センターを設立。ブランド戦略を管理し、クリエイティブ・リサーチを行いながら、ガマニアのオリジナル・プロダクト・ブランドやクリエイティブ・ジャーナルサイトの運営なども行っている。現在はDesigners Association of Taiwanを運営するほか、週一で台北市の実践大学(Shih Chien University)でブランディング・デザインを教えている。今年10月には、静岡市で開催された「アジアデザイン会議」出演のために来日した。
http://corp.gamania.com/
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